【銀魂】また、この場所で【神威】

青色の世界 ページ24

Aside


「…小さい時、危ないって知らなくてさ、私……海に入って、溺れちゃったの」

威「………は、」


はあああ！？、と。私の言葉に神威くんは海に響き渡らんばかりに、というか響き渡る声で叫んだ。私達が座るテトラポットから少し離れた場所にいたカモメが驚いてパタパタと飛んでいく。


威「な、何やってんの死ぬの！？」

「いや、今現在生きてるから問題ないよ〜」
威「あるよ！！」


「なんでそんな『あんなこともあったなぁ』みたいなテンションでいられるのさ」と。いや、だって生きてるし、問題点が私には見当たらないのだけれど。青い綺麗な目を丸く見開かせて、彼は隣にいる私を見つめる。


威「…それで、どうなったの」

「ふふ、聞きたい？」


そんな目がおかしくてクスクス笑っていれば、恐る恐るという風に頷いた。それなら、聞かせてあげよう。


「……確かね、私がまだ8歳くらいの時かな」


…この海は遊泳禁止。それはその時の幼い私も知っていたのだけれど、どうして泳いじゃいけないのか、その理由を知らなかった。「こんなに綺麗な海なのに、なんで泳いじゃいけないんだろ」って、ずっと不思議に思ってた。

…その時はまだ、シーグラスと出会うほんの少し前で、私は多分、この時も綺麗なものが好きだったのだと思う。キラキラ輝きを放つ、眩しいその海が、私は好きだった。なのに、夏になってもそこには誰一人立ち寄らない。だからそれがとても不思議で、その海がとても、寂しそうに見えてしまったのだ。


…だから私は、親に隠れて水着を着て、その上から服を着て、そのまま海に繰り出した。ちょっとくらいなら、まぁ大丈夫だろうと。もし誰かに見つかったら、その時は逃げ出そう。そう決めて。


当時の私はワクワクして、その海に足を踏み入れて、せめて浅瀬で泳ごうと思って、少しだけ海水の中を歩いて、そうしたら突然。


『！？』


ドプン、と。足がいきなり砂につかなくなっていて、私はその青色の世界に落ちたのだ。浮き輪なんてものを持っていなかった私は、ブクブクと沈みかける。が、


『お嬢ちゃん！？大丈夫かい！？』


…幸い、近くにたまたま通りかかった街の住民のおじさんに、私は助けられていて、気がついたら私は砂浜に横になっていた。


……勿論そのあとは、こっぴどく怒られたけれど。


「……でもね、それでも、後悔はしてないんだよね」

威「なんで？」


溺れかけたのに、と、神威くんは不可思議なものを見るような目で私を見る。それに私は答える。


「……綺麗だったから」

好きだな→←勿体ない

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す