ストレート ページ11
威「ヤッホー」
「うああああ……!」
……色気もクソもないような声を上げるもんだから、俺はついおかしくてクツクツと笑ってしまう。真ん丸くさせた目で俺を見つめて、慌てて振り向いた彼女、Aは、俺が笑っているのを確認すると、ムゥッと顔をむくれさせる。
「……神威くん、君は人のことを驚かすのが趣味なのかな」
威「ごめんごめん。あんまり気づかないもんだから、からかいたくなっちゃうんだよ」
つまりは君が悪い、と言えば、理不尽だよ!!と本気の抗議をする。人差し指で俺を指してぶんぶんと縦に振るもんだから、またおかしくて笑ってしまう。
「…もうっ………ていうか、今日も来てくれたんだね」
と、怒ったような顔からふと、柔らかな表情に戻ってAは言う。真っ直ぐに俺を、その黒い目で見つめて。
威「……今日もここに居るって、Aが言ったんでしょ」
「ふふ、名前まで覚えててくれたんだ」
威「…嬉しいの?」
「うん、すごく」
俺が冗談紛れにそう聞くと、彼女は大きく頷いて、ニヒヒと笑ってそう言った。あまりにもストレートに答えてくるもんだから、調子が狂う。誤魔化すように目を逸らして、「あっそ」と素っ気なく返した。
「優しいね、神威くんは」
威「……別に、そんなんじゃない」
照れ屋さん、と。いたずらっぽく彼女は微笑んで、両手を背中で組む。キラキラと今日も輝く海を背景に彼女が笑うもんだから、映画のワンシーンを見ているような気がしてくる。あまりにも、綺麗で。
威「…そ、それで?今日も集めてんの?シーグラス」
頭の後ろで両手を俺も組むと、Aはうん、と頷くも、眉を少し下げて続けた。
「でも、今日は中々見つからないね。昨日集めすぎたかな…」
威「そうなの?」
どうやら今日は、あまり収穫できていないらしく。Aはまたしゃがみ込むと、砂浜をじっと見つめては、手で掘ったりしている。
「それに、ほら、最近はシーグラスも少なくなってるんだよ。瓶とかより、ペットボトルが多くなってるから」
威「あー…」
成る程ね、と、俺は相槌をうつ。そりゃあ、瓶が少なくなれば、海に流れる瓶もなくなる。シーグラスは出来なくなる。彼女にとっては死活問題なのかもしれない。
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月兎。(プロフ) - ピピコさん» ふふ、今だにみに来てしまいます笑。私も作品をかいているのですが昔みた時のこの小説の印象が強くて。私の小説はピピコさんの小説に結構影響されてます。これからも頑張ってくださいね!素敵でした! (2018年4月6日 18時) (レス) id: 62fe788d65 (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - 神威いのちさん» 神威いのちさん!ありがとうございます!!5回も!!たくさん読んでくれて嬉しいです!こんなシーンが書きたいとかシーグラスを使ってみたいとか、そんな私の嗜好が詰まったお話でしたが、お楽しみ頂けたなら幸いです!読んで頂きありがとうございました! (2018年3月10日 15時) (レス) id: 0ec549c041 (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - 月兎。さん» 月兎。さん!ありがとうございます!!わぁぁ探してくれたんですか…!初めて書いた神威さんのお話なので、すごく考え込んだんですけど、そう言って貰えるなら書いて良かったなぁと心から思いました!情景描写も頑張ったので嬉しいです!ありがとうございます! (2018年3月10日 15時) (レス) id: 0ec549c041 (このIDを非表示/違反報告)
神威いのち - むちゃくちゃ感動しました!何回見ても飽きません!因みに私、この作品5回くらい見たんですけど、何度見ても涙が止まりませんでした! (2018年3月10日 14時) (レス) id: 28f8b922b6 (このIDを非表示/違反報告)
月兎。(プロフ) - 思わずため息が出るほど素敵な作品でした。以前この作品を読んでもう一度読みたくて、探してまでここに来ました。語彙力ないのは許してください笑。一つ一つの表現が綺麗で、実際にそこにいるかのような文章でした。素敵です。最高でした!! (2018年3月1日 15時) (レス) id: 62fe788d65 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ピピコ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/pipiko1030/
作成日時:2017年7月28日 21時