不器用なダーリン【三途春千夜】

不器用.25 ページ25

貴「おかえりなさい、春千夜さん」
三途「ﾁｯ…邪魔」

貴「…っ！……ごめんなさい…」
Aの横をすり抜けて脱衣場に入る

…ダメだ
イライラしてしょうがない

出迎えてくれたAに
あんなことを言ったのは初めてだった

Aの驚いた…
それでいて悲しそうな顔が頭の中を回る

…俺なんか気にせず寝てろよ
灰谷兄みたいなのが好きなんだろ…？

普通に会話できて
普通に笑わせてくれて

普通に冗談も言えて…
…全部、俺がしてやれないこと

もし俺が緊張しないで喋れたら
優しくできてたなら

Aはこっちを向いてくれてたか…？
…なんてな

出来てから言えよって話だ
何一つできてなくて

なんなら酷い言葉でAを傷つけて…
そんな奴が何言ってんだって話だ

俺の事なんか好きじゃないだろうに
毎日夕飯作って待っててくれてるのに

そのお返しが「邪魔」って言葉とか
我ながら最低だ

風呂から上がって体は綺麗になっても
心の中はモヤモヤしたままだった

きっとリビングに行けばAはまた笑顔で
夕飯を食うか聞いてくれるだろう

…ダメだ
今食っても料理を批判する未来しか見えねぇ

絶対思ってないこと言って傷つける
食いたい、けど…

今日はやめた方がいいだろう
いつもみたいにいらねぇ、って

……最低かよ
“いつもみたいに”がそもそもクソだわ

…優しく言おう
食いたいけどいらない、って優しく

三途「…はぁ…」
息を吐いてリビングに入る

貴「あ、春千夜さん。お夕飯はどうしますか？」
三途「いらねぇよ。マジ喋りかけんな」

………俺ってホントクソ野郎だ
何がどうなったらそんなこと言えんだよ

三途「灰谷兄と歩いてたんだろ？楽しそうにしてたらしいな。クソビッチが」

貴「…っ、！」
Aの目から涙が落ちた

貴「ごめんなさ…目にゴミが入っただけなので、、灰谷さん、は……何でもないです、ごめんなさい…」

三途「……っ」
…最低だ…

また思ってないこと言って泣かせた…
灰谷さんは…って何か言いかけてやめた

その先を聞く勇気はなかった
これ以上Aと話してもきっと泣かせるだけだ

貴「ごめんなさい…今日は、もう寝ますね…おやすみなさい、春千夜さん」

涙を拭いながら必死に笑顔を作るA
その顔を見て胸が痛んだ

パタンっ、と扉が閉まって1人になる
三途「………ホント、どうしようもねぇクズだ…」

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