不器用なダーリン【三途春千夜】

不器用.14. ページ14

貴「あ…帰ってきた」
ガチャガチャ、っていう金属音を聞いて

ソファーから立ち上がった
貴「おかえりなさい、春千夜さん」

三途「………」
貴「……春千夜さん？」

いつもならそのままお風呂場に行くのに
今日は靴も脱がないで玄関に立っている

…今朝のスーツのままだ
接待とか商談だったのかな

貴「春千夜さん？どうしましたか？」
三途「……ん」

貴「え…」
急に紙袋を押し付けられた

貴「あ…これって…」
その紙袋を見て気づく

駅前の有名なお店のものだ
いつも行列ができてるところで

食べてみたいとずっと思っていた
貴「これどうしたんですか？」

三途「…帰り道に落ちてたからやる。シュークリームとマカロン。食えるだろ」

貴「……」
嘘ばっかりだ

帰り道に落ちてた、なんて
分かりやすすぎるでしょう

春くんは車移動だし
落ちてるものを拾ってくるわけない

それに箱の中身を知ってるのは
春くんが自分で選んだから

…これは考えすぎかもしれないけど…
シュークリームはそのお店の1番人気だけど

マカロンは私の好きなお菓子だ
1度だけ春くんの前で言ったことがある

…覚えて、くれてたのかな…
偶然かな…？

どっちだったとしても…
貴「ありがとうございます…嬉しいです…」

私の為に買ってきてくれた…？
そんな事あるかな？

私は春くんに嫌われてるのに
理由は分からないけど嬉しいって気持ちは変わらない

三途「ん……風呂入ってくる」
そう言うと脱衣場に消えていく

…怒らずに会話してくれた…
少しだけ、春くんに近づけたかな？

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