ファンタジードール (ページ11)

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樹

日曜日の昼間、俺は自宅のカウンセリングルームにいた。

カウンセリングではドールの不調の原因を探ることが多い。ドール自身もオーナーもわからないコンフリクトを一緒に探していく。

今日のカウンセリングには人間の男性が来ていた。最近ドールが仕事に生き生きして会ってくれないという相談内容だった。

子供のドールはコアラみたいにオーナーにしがみつくことが多いけど、社会人にもなると深い信頼が形成されて離れていても問題がないドールも多い。ほぼ自立した状態になって暮らすことを考えて、ドールには名字と名前をつける傾向にある。慎太郎は友情を好むドールだったから俺の田中とは違う森本って名字をつけてる。

俺が驚くのはこういう相談に来る人間は多いということ。寂しいと言って貰えるドールは愛されているから問題ないからこの相談は案外厄介だ。

ドール自身は本当に仕事が楽しいだけだったり友人に恵まれていたりすることもあるけど、オーナーへの恩返し的な要素を持たせているときがある。

活躍したら喜んでくれるとか、いつかオーナーに高価なプレゼントをするためとか。そういう場合は理解し合うのが難しくて、オーナーがドールに対する新しい側面を見せる。それが関係を悪化させてドールの不調の原因になることがある。

今日の相談者も、日中にたまらなくなってドールの仕事場に駆け込んでしまったことがあるという。

まぁ、そんな話より面倒くさそうなのがうちに来てしまったのだけど、

「京本が帰ってこない。寂しいから泊めて欲しい。」

「探しに行けば？」

「バカンス中。」

「どこに？」

「ハワイ。金曜の放課後飛び立った。」

次の方どうぞで入ってきた北斗は、なんとも可哀想な顔をしていた。捨てられちゃったっていうのが本当のとこだろう。まさかハワイを置いていかれるとは思わない。

どっちがドールかわからない。

「慎太郎とじいちゃんに聞かなきゃわかんないけど、俺はいいよ。」

「ありがとう。でも、、、その、どう思う？」

「きょものことだし問題ないだろ。」

「そうか？いつも自撮り送ってくるのにそれがない！時差があるからって返信も少ない。それでもお前はいつもの自由だって言うのか！？」

俺の胸ぐらを掴んで怒鳴り散らかしてくる北斗。

まぁまぁと宥めて椅子に座らせる。黒髪がいつもより湿って見える。