104。 ページ4
「………………」
カレンダーには大きく始業式と書かれている。
宿題もそこそこ頑張って終わらせた。寝坊することもなく、このまま着替えて学校に向かえば爽やかな新学期のスタートである。
「違う！！！！！！！！」
そう、違う。
とても大事なことを忘れている。
ジョングクだ。
ジョングクに伝えられていない。
物語のヒロインっぽく“ちゃんと、ジョングクに伝えたい”と心の中で決意したはいいものの、肝心のジョングクがあれから一度も我が家に帰って来なかったのだ。
あの日からジョングクはずっと友達の家に泊まっていたという。数日の間だったけれど、ジョングクがそんなに外泊をするのは珍しく…お母さんはうちが嫌になったのかと毎晩悲しんでいた。
おかしい…。いや、別に友達の家にお泊りなんて普通のことなんだけど……なんで、どうして、このタイミングで？？
一人部屋で考え込んでいると、玄関から声が聞こえた。
「…あ、帰ってきた」
さすがに始業式の日には帰ってくるよね、よかった、一安心。
「お、おかえり、あのさっ！」
ジョングクが階段を上ってきたタイミングを見計らって声をかけた。
JK『…ただいま』
ジョングクは私と目を合わせることなく、そのまま部屋に入っていってしまった。
あのさっ、に続く言葉たちは喉に詰まって大渋滞を起こしている。
ジョングクの様子がおかしいことは明らかだった。
ほんの数秒後、制服に着替えたジョングクが部屋から出てきて固まったままの私をスルーして階段を下り始める。
「え、いや、あのさっ！」
無理矢理後ろから掴んだ腕。
振り返るジョングクと目が合う。
今更だけど私、寝起きのどんぐり顔だ。
照明を越えた久しぶりのイケメンの輝きに後ろに倒れそうになる。
「ジョングクに話したいことがっ…」
パッとすぐにそらされる視線。
その視線は、ジョングクの腕を掴んでいる私の手に移った。
「あ、ごめん…」
JK『急いでるんで、先行きます』
ろくに目も合わせず、そう言ったジョングクは足早に階段を下りてそのまま行ってしまった。
「……変なの…」
ひとり呟いた言葉は静寂に消えた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 2820人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「BTS」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
zizzi(プロフ) - ほんと面白くてずっと笑ってました！いよさんの言葉選びが最高すぎて牛乳飲んでなくてもヤバかったです笑楽しくて素敵な作品をありがとうございました！ (2020年8月26日 22時) (
レス) id: 575ff88325 (このIDを非表示/違反報告)
いちご - こんなに良い話を書いてくださってありがとうございます！笑もう終始キュンキュンしまくりでした！恋愛映画の実写化いけるとおもいます！いまもう夜中の3時なんですけど時間忘れるくらい夢中に読んでました！！この作品大好きです！！続編も是非楽しみにまってます！ (2019年5月6日 3時) (レス) id: f99e6b0772 (このIDを非表示/違反報告)
いさな(プロフ) - いやもう一気読みしました笑笑めっちゃおもしろかったです笑笑いま夜中の2時なんですけど、作者さんの他の作品読んできますね笑笑 (2019年3月26日 2時) (レス) id: 1147e61943 (このIDを非表示/違反報告)
つむぎ - 消さないでくださいね。 (2019年1月25日 14時) (レス) id: 811af0af41 (このIDを非表示/違反報告)
カナタ(プロフ) - 最高すぎました。ありがとうございます。他の皆さんが仰っている通りクオリティが高すぎてやばかったです。素敵な作品に出会えたことに感謝です。ありがとうございました！ (2018年12月18日 22時) (レス) id: cfc195a482 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：いよ
| 作成日時：2017年12月17日 1時
