すきなものの食べかた：08 ページ8
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「 なあ、濡れるで 」
『 え 』
「 傘からめっちゃ出とる、もっとこっち寄って 」
『 あ、ありがとう... 』
男の人と傘の中で二人きり、
なんて経験は人生で初めてだけど、侮っていた。
当たり前だけど ひとつの傘に肩を
並べて入るから、治くんとの距離がとても近い。
たぶん、その距離感による恥じらいから
私は無意識のうちにどんどん傘から
フェードアウトしていっている。
ああ、意識してるの丸出しで恥ずかしい、
治くんのこの私を気遣ってくれる
優しい言葉も、何度目のものだろう。
『 でも、治くんも肩 濡れとる、
もっとそっちの方に傘傾けて... 』
「 これくらい平気やで 」
そう言われても、やっぱり私としては
申し訳なくて、恐る恐る見上げた治くんの顔は、
本当に平気だと言ってるみたいで。
『 ..治くん、優しいんやね 』
「 そう？ 」
『 うん、なんか侑とは全然違う、 』
「 ..あー 」
ほんの一瞬、侑と比べられたのが
気に入らなかったのか、治くんが
眉間に皺を寄せたのを、私は見逃さなかった。
まあそうか、双子といえど
あんな悪魔みたいな人間と比べられてもね。
「 あいつはあかん 」
『 はは、やっぱり兄弟の治くんから見てもそう思うんやね 』
「 兄弟やから余計にそう思うんかもな、てか
くん付けせんでも、治でええで 」
『 あ、そう？じゃあ私もAでええよ 』
自然と決まった、お互いの新しい呼び方。
最初は彼の名前だけじゃ物足りなくて、
治、と呼ぶのはソワソワして、
何度か治くん、と呼んでしまった。
その度に、何か言いたそうに
少し意地悪く笑う治だったけど、
やっぱり治くんも、そういう顔するんだなって
少しドキドキした。
「 侑がな、家でよくAの話すんねん 」
『 え？何？悪口？ 』
「 まあ、悪口とも言えるんかな 」
『 うわ、腹立つなあ 』
「 なんかえらいAのこと気に入っとるみたいでな、いっつも隣の席でちょっかいかけとるみたいで 」
『 ああ..よくちょっかい出されとります... 』
「 しゃあない、あいつに気に入られたからには 」
侑のやつ、治に変なこと話してないといいな。
最初はあんなに緊張していたのに、
気がつけば自然と口は動いていて、
治と会話するのが楽しくなっていた
歩幅も私に合わせてくれてたし、
今思えば、治がさしててくれた傘は、
ほぼ私の方に傾いていたと思う。
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うに - すすす素敵すぎてびっくりしました！最後までキュンキュンしながら読みました！ (2021年8月5日 15時) (
レス) id: aca41c32b2 (このIDを非表示/違反報告)
らんたん(プロフ) - こんなにキュンキュンしたのは久しぶりです！本当にありがとうございます。胸が苦しい… (2021年4月19日 11時) (レス) id: 1e7e266fc1 (このIDを非表示/違反報告)
あかね - 終盤泣きました。最高of最高をありがとうございます(真顔)。 (2021年1月16日 16時) (レス) id: f36e099441 (このIDを非表示/違反報告)
黎子(プロフ) - 初コメ失礼します！！終始キュンキュンしっぱなしでした、最高です！宮兄弟が好きな私にとって最高な作品でした！これからも頑張ってください！ (2018年12月18日 0時) (レス) id: 1c7dde52b2 (このIDを非表示/違反報告)
鈕(プロフ) - つくねさん» ありがとうございます〜〜！！そういっていただけてとても嬉しいです；；；； (2018年11月16日 21時) (レス) id: 8b744c9e10 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：鈕
| 作成日時：2018年2月3日 17時
