すきなものの食べかた【宮治】

すきなものの食べかた：07 ページ7

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ここでまさかの口を開いたのは
さっきまで黙ってた治くんで、
治くんの思わぬ発言に、その場にいた
治くん以外の3人の視線が治くんに え？と集中した



『 いやいや、傘は流石に..
それに治くんが困るし、 』

「 ええよ、角名に入れさせてもらうから 」

「 お前アホちゃうか！180超えの大男3人が
ひとつの傘に入れるわけないやろ！ 」


「 じゃあさ、治がその子とふたりで
治の傘さして帰ればいいんじゃない？
侑は俺の傘に入れば、ほら、誰も濡れない 」

「 ..角名、おまえ天才か 」



ハッ、と気づいたような顔をしてそういった後に、
何やらニヤリと含み笑いを浮かべる侑。
おいやめろ、そのニヤリやめろ。
お前今日一体なんなんだよ腹立つな。

角名くんもなんでちょっとドヤ顔？
とどのつまり、治くんと相合傘をして帰れと？



「 そんじゃ俺らはお暇します〜 」

「 お暇します〜 」

「 あ、お前ら おい、 」



どうやらスナくんが提案した
A&治くん相合傘作戦(?)に
拒否権はないらしく、侑とスナくんは
仲良く相合傘をしながらその場を去った。




『 あの、なんかごめんなさい.. 』

「 いやこっちこそ..またアホのせいで.. 」


『 私、大丈夫だから、そんなに家も遠くないし、
走って帰れば大丈夫だから、』

「 でもめっちゃ降っとるで、冬やし風邪ひく 」


『 ううん、私 身体だけは頑丈やねん、せやから 』

「 ..嫌やったら、俺が走って帰るけど 」

『 え、嫌なんて、全然そんなんちゃう！ 』



慌てて顔を上げてみれば、
少しびっくりした顔の治くんと目があって、
なんだか恥ずかしくなって、すぐに目を逸らした。

嫌なんて気持ちは微塵もないけど、
恥ずかしい、という気持ちは大いにある。
男の人と相合傘なんてしたことないし。

治くんは稲荷崎(ここ)のバレー部の、
大切な部員だ。風邪なんかひかせられない。



「 そうか 」


上から降ってきた、
わけがわからないくらいに柔らかくて
優しい笑いを含んだ声に顔が上げられず、
ただ首を縦に振ることしかできなかった。



「 でもここまできて濡れて帰らすわけにはいかんから、一緒に傘入って帰って 」

『 ...ありがとう 』



そんな風に言われたら、断るなんてできない。

お礼を言って、私は治くんの傘に入り、
彼と肩を並べながら学校を出た。



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