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すきなものの食べかた:47 ページ47




「 俺な、ほんまはAが思っとるほど優しい奴やないねん 」


いつのまにか雨も止み、
私の答えを受け入れてくれ、
私の隣を歩く彼がふいにそんなことを口にした。


『 え、突然どしたん 』

「 Aが部活に入る、って聞いた時も、ああAが俺以外の男とも仲良くなってまう、とか、Aが角名とか侑とコソコソ話しとると気になって落ち着かんかったし、イライラすることもあったし、 」


知らなかった。彼がそんな風に考えていたなんて。
はじめて耳にしたことに驚くも、この穏やかそうで、落ち着いた彼が妬いてただなんて。嬉しくて、思わず頬が緩む。

でも、それをいったら私だって。


『 …でも私も嫌やった、治があの子のこと可愛い、って言ったりするのも、教科書貸してるとこ見ただけでモヤモヤしたし。 一緒に相合傘して帰るんじゃないか、って想像しただけでもショックすぎた 』


今更ながら、どの口が言うか、
彼に便乗してそんなことを言ったものの、友だちでいたいと言っておきながらそんな風に考えていたなんて、とウザがられるだろうか。

ハッとして、彼の方を見ると、大きな目をパチクリさせている。…ほら、びっくりされてる。



「 …ほんまに? 」

『 …う、うん、なんかごめん、 』

「 …いや、めっちゃ嬉しいねんけど 」


え、と気まずさで逸らしていた顔を
再び彼に向けると、口元を手で覆って、
その隙間から、上がった口角が覗いてみえる。



『 …あの、恥ずかしいから、忘れ、っ、 』



最後まで言い終わらないうちに
腕を引かれ、不意打ちすぎたために
その体格差から簡単にバランスを崩してしまい、
顔を上げると、目の前に治の顔があったものだから驚いて思わずひっ、と女らしくない悲鳴が漏れる。



「 忘れへんよ、絶対 」

『 わ、わわ、どうか、堪忍…! 』


突然の強引な治の変貌ぶりに、顔から火が出そうだ。腰に回されたたくましい腕が、彼から離れることを許してくれない。

妖しく上がった口角、いつもの何を考えているのか読み取れない目の奥に、ぎらぎらと、捕食者のような色が宿りはじめて。

ふと、いつか聞いた侑の声が頭の中で響く。



【あいつには俺と同じ血が流れとるんやで、たった一日数回 話しただけじゃわからんやろ、本性なんか】


ああ、はい、そういうことですか。
でもね、全然嫌じゃないよ、だって治だもの。
私だって好きだもの。求めるだけ求めて欲しい。


.

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うに - すすす素敵すぎてびっくりしました!最後までキュンキュンしながら読みました! (2021年8月5日 15時) (レス) id: aca41c32b2 (このIDを非表示/違反報告)
らんたん(プロフ) - こんなにキュンキュンしたのは久しぶりです!本当にありがとうございます。胸が苦しい… (2021年4月19日 11時) (レス) id: 1e7e266fc1 (このIDを非表示/違反報告)
あかね - 終盤泣きました。最高of最高をありがとうございます(真顔)。 (2021年1月16日 16時) (レス) id: f36e099441 (このIDを非表示/違反報告)
黎子(プロフ) - 初コメ失礼します!!終始キュンキュンしっぱなしでした、最高です!宮兄弟が好きな私にとって最高な作品でした!これからも頑張ってください! (2018年12月18日 0時) (レス) id: 1c7dde52b2 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - つくねさん» ありがとうございます〜〜!!そういっていただけてとても嬉しいです;;;; (2018年11月16日 21時) (レス) id: 8b744c9e10 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2018年2月3日 17時

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