すきなものの食べかた:46 ページ46
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鈍った頭でも、なんとなくわかる。
それでも、バカな私はわからないフリをしようとする。もし、彼が私をからかっていたりして、傷つくことを恐れて。
『 わか、んない、 』
「 …ほんまに? 」
わかっている、彼の言いたいことは。
私がわかっていることを、彼はわかっている。
そんな目で、彼は私を見下ろしていた。
本当ならば、どれほど嬉しいか。
彼がこんな状況で嘘をつくようなひとじゃないことくらいわかっているが、過去の古傷が憎らしいまでに私を神経質に、天邪鬼にさせる。
「 …嫌やったら殴って 」
痺れを切らしたような静かな声がすると同時に、
腕を引かれて、治の匂いが目の前にいっぱいに広がった。耳元で、治の心臓の鼓動の音が聞こえる。
「 …今更かもしれんけどな、俺、お前と友だちでおりたいと思わへんのや。なんとも思ってない女に、わざわざ傘入れて家まで送ったりせえへんし、キスだってせん 」
「 好きやねん、Aのことが 」
彼にここまで言わせてしまうなんて、私はどこまでバカなんだろう。私に言い聞かせるように
そういう彼の言葉に、雨ではない水滴が頬を伝う。
やはり私は、彼に酷いことを言っていたのだ。
彼の気持ちにも、自分の気持ちにも気づいていながら自分が傷つかないためなどと言い訳をして、友だちに戻ろう、なんて。彼の気持ちを無視していたのだから。
そんな私に、面と向かってこうして想いを伝えてくれたのだ。彼はどれほど強いのか。それに比べて、彼からいつかこうして想いを告げてくれるのを期待しながら逃げ回っていた私は弱い。
彼にそう言ってもらえる資格なんてあるのか、今更私も、と彼に想いを告げる権利なんてあるのか。
『 …私、治にそういってもらえる資格なんてない 』
「 そんなのどうでもええねん、俺が好きって言うてるんやから 」
彼の優しすぎる言葉と、
真っ直ぐに私を見つめる視線が、
今は苦しくて、溢れ出した涙が止まらなかった。
「 そんな泣かんといて、
お前の泣き顔見るのキツイ 」
『 だって、わたし、 』
「 …ほんまはな、あのとき納得いかへんくて。
Aの好きにしてほしいけど、もう一回聞かせてくれるか 」
このまま友だちでいるか、その先に進むか。
本当に、私の好きにさせてくれるのか。
そう言いながらも、ずっと前から私の想いを確信していたであろう彼の、私を見つめる目は1つの答えしか認めてくれそうにないけど。
『 …わたしは、 』
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うに - すすす素敵すぎてびっくりしました!最後までキュンキュンしながら読みました! (2021年8月5日 15時) (レス) id: aca41c32b2 (このIDを非表示/違反報告)
らんたん(プロフ) - こんなにキュンキュンしたのは久しぶりです!本当にありがとうございます。胸が苦しい… (2021年4月19日 11時) (レス) id: 1e7e266fc1 (このIDを非表示/違反報告)
あかね - 終盤泣きました。最高of最高をありがとうございます(真顔)。 (2021年1月16日 16時) (レス) id: f36e099441 (このIDを非表示/違反報告)
黎子(プロフ) - 初コメ失礼します!!終始キュンキュンしっぱなしでした、最高です!宮兄弟が好きな私にとって最高な作品でした!これからも頑張ってください! (2018年12月18日 0時) (レス) id: 1c7dde52b2 (このIDを非表示/違反報告)
鈕(プロフ) - つくねさん» ありがとうございます〜〜!!そういっていただけてとても嬉しいです;;;; (2018年11月16日 21時) (レス) id: 8b744c9e10 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:鈕 | 作成日時:2018年2月3日 17時