すきなものの食べかた：43 ページ43
*
あの日から、どれくらい経っただろうか
ぐちゃぐちゃになった頭の中と感情が爆発して
咄嗟に彼女にあんなことをしてしまったが、
冷静になってみると、もしかしたら嫌われたかもしれない。
突然あんなことをしてしまったから、
罪悪感がないわけでもない、不安や、後悔がないわけでもなかった。
それでも案外、俺は図太い人間らしい。
どこかで彼女が自分のことを意識するようになったのではないかとぼんやり考える自分がいた。
もう回りくどいことはやめよう、
あれから彼女と口を聞いてはいないが、
自分の思いをはっきりと伝えようと決めた。
.
『 今まで通り、仲良くして欲しい、と思う 』
久しぶりに、彼女と口を聞いた。
俺が謝罪もそこそこに本題に入ろうと思えば、
彼女の途切れ途切れの言葉に、耳を疑った。
友だちの先に進みたい俺、
今まで通り、仲良くしたい彼女。
好きだという言葉を、飲み込んだ
彼女がそう望むなら、
俺のその言葉は行く宛をなくして死んでしまう。
それなら声には出さず、うちに仕舞っておいた方がいい。
「 …そうか 」
期待していた自分が馬鹿みたいだった。
発せられた自分の声がひどく情けなく聞こえて、顔をあげたら、複雑そうな、全く笑えてない顔で彼女は笑っていた。
それ、どういう表情なん？
彼女だって自分の答えに納得できてないように見える、といえば、それはただの俺の都合のいい幻覚と言われるだろうか。
友だちでおりたい、っていうなら、もっとちゃんと笑って、説得力のある顔で言って欲しかった。
俺が馬鹿みたいな期待をせんように。
そこからはずっと、友だちでいると決めたにも関わらず彼女の表情は明るくなくて。彼女の家に着き、別れ際になっても、彼女は何か言いたそうにしていた。
何か言いたいことがあるなら言って欲しい、
自分も彼女との関係が崩れることを恐れて伝えたいことは伝えられなかったけど、彼女の何やら落ち着かない様子がどうにももどかしかった。
「 “今まで通り仲良くして欲しい”、ってことは、
俺がしたキスの意味も、どうでもええってことやんな？ 」
彼女も、僅かに俺と同様の感情を俺に抱いているのであればとまだ馬鹿な期待をしていた俺は皮肉を零した。
あのときと同じく彼女の眼が揺れて、
動揺した様子を見せた。何か言いたそうにしていたが、関係ない。俺たちはこれから友だちに戻るのだから。
せめて俺がキスした理由を思い悩めばいい。
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うに - すすす素敵すぎてびっくりしました！最後までキュンキュンしながら読みました！ (2021年8月5日 15時) (
レス) id: aca41c32b2 (このIDを非表示/違反報告)
らんたん(プロフ) - こんなにキュンキュンしたのは久しぶりです！本当にありがとうございます。胸が苦しい… (2021年4月19日 11時) (レス) id: 1e7e266fc1 (このIDを非表示/違反報告)
あかね - 終盤泣きました。最高of最高をありがとうございます(真顔)。 (2021年1月16日 16時) (レス) id: f36e099441 (このIDを非表示/違反報告)
黎子(プロフ) - 初コメ失礼します！！終始キュンキュンしっぱなしでした、最高です！宮兄弟が好きな私にとって最高な作品でした！これからも頑張ってください！ (2018年12月18日 0時) (レス) id: 1c7dde52b2 (このIDを非表示/違反報告)
鈕(プロフ) - つくねさん» ありがとうございます〜〜！！そういっていただけてとても嬉しいです；；；； (2018年11月16日 21時) (レス) id: 8b744c9e10 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：鈕
| 作成日時：2018年2月3日 17時
