すきなものの食べかた:42 ページ42
*
彼女の世界に、俺はちゃんといるだろうか
俺と接するときと、侑や角名と接するときでは
彼女の雰囲気はなんだか異なる。侑や角名に対しては、なんだか気を許してるような。
時折彼女が角名や侑とコソコソと話すところを見て、後に気になって何を話していたのか聞いても、奴らは「妬いてるのか」などと面白がってはぐらかすので話にならない。
彼女にさりげなく聞いても、
なんでもないと流される。積もりに積もっていくこの感情が、よくないものだとはわかっていた。
「 俺もAにちょっかいだしてみようかな 」
目を丸くする彼女の顔から見るに、
俺の言葉はよっぽどおかしかったのか。
言葉の意味をようやく理解し始めて、慌てふためく姿が面白くて思わず笑ってしまう。
『 え、え、治が? 』
「 うん、侑や角名ばっかズルいし 」
『 な、なななんで? 』
普段の俺、この子に対して
絶対こんなん言わへんもん、
びっくりするのも当然か。
本気で俺のこと優しいやつとか思ってんのかな、
俺かてたまには好きな子いじめたりとかしたいし、
そうじゃなくても、そうすることで彼女が俺のことを意識するようになればいいと思う。
そういう表情を、ずっと見てみたかった。
あまり勘違いせんといて、
俺はお前が思っとるほど、優しい奴やない。
あわよくば、お前の視界に入る男が、俺だけやったらええのに、なんて考えてしまう自分がおるんやから。
.
その日の部活帰り、
俺はコンビニの駐車場で彼女にキスをした
『 あ、角名も今の全部読み終わって
今度は違うやつ読み始めたわ、てか角名も
漫画読んだりするんやな、意外 』
今の俺を、爆発させるのには充分な言葉で。
前にもあった、俺と二人でいても、
彼女が話題にあげるのは自分の片割れのこと。
あまりいい気はしない、好きな子が、違う男の話をわざわざするのだから。
簡単に腕をとればバランスを崩し、
すっぽりと胸の中に収まってしまう。
一瞬だけ、揺れる瞳と視線がかち合った。
そこからは、何も考えていなかった。
俺を見ろ、と彼女の中に俺を残すように、
なんの許可もなく、俺は彼女に、
勝手に自分の存在を植え付けたのだ。
ただ残るのは、彼女の温もりと、
弱くもどうしてか鼓膜を刺激する、彼女の俺の名前を呼ぶ声だけだった。
自分勝手で最低やろ、
彼女に俺だけを見てほしいが故に、
強引にこんなことするんやもん。
お前はこんな俺を、まだ優しいと言うのか。
.
2111人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「ハイキュー」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
うに - すすす素敵すぎてびっくりしました!最後までキュンキュンしながら読みました! (2021年8月5日 15時) (レス) id: aca41c32b2 (このIDを非表示/違反報告)
らんたん(プロフ) - こんなにキュンキュンしたのは久しぶりです!本当にありがとうございます。胸が苦しい… (2021年4月19日 11時) (レス) id: 1e7e266fc1 (このIDを非表示/違反報告)
あかね - 終盤泣きました。最高of最高をありがとうございます(真顔)。 (2021年1月16日 16時) (レス) id: f36e099441 (このIDを非表示/違反報告)
黎子(プロフ) - 初コメ失礼します!!終始キュンキュンしっぱなしでした、最高です!宮兄弟が好きな私にとって最高な作品でした!これからも頑張ってください! (2018年12月18日 0時) (レス) id: 1c7dde52b2 (このIDを非表示/違反報告)
鈕(プロフ) - つくねさん» ありがとうございます〜〜!!そういっていただけてとても嬉しいです;;;; (2018年11月16日 21時) (レス) id: 8b744c9e10 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:鈕 | 作成日時:2018年2月3日 17時