すきなものの食べかた【宮治】

すきなものの食べかた：04 ページ4

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ホームルームが終わり、
先ほど言ったように、治くんは
うちのクラスまで教科書を持ってきてくれた

関わったこともないわたしに
成り行きとはいえ、教科書を貸してくれたことに
何度もお礼を言っておいた

(ええんやで！教科書ならいくらでも貸したる！と全然関係ない侑が話に入ってきて治くんに冷ややかな視線を浴びせられていた)



「 教科書は85ページを開いて−− 」



表紙の隅に小さく書かれた " 宮治 "の文字。

ほんの少しだけ丸みがかかった、
女の子が書いた、と言っても怪しまれない、
男子のわりに綺麗な字だな。


先生の言ったページを開くと、
1組の方が少し授業が進んでいるようで、
今日私たちが勉強する部分がマーカーで線が引かれている。


治くんは勉強できるのかな、
でもマーカーで線引いてるから
授業はちゃんと聞いてるんだろうな(当たり前か)

隣の侑(アホ)は古典の時間とか寝てるけど。



( ん..？ )



よくよく見たら、教科書の
余白のところに何か書かれている。
メモかな、って思ったけど絵だし。

なんだ、治くんも授業が退屈で
教科書に落書きとかするんだな、
ちょっとかわいいなって思ったり。



『 ..おにぎりだ 』

「 は？ 」



漏れてしまった心の声に
今日は珍しく睡魔と対抗しながら
起きている侑が反応してきた。



『 ..おにぎりが、描いてある... 』

「 ？お、おう？ 」


『 治くんが描いたんかな...？ 』

「 ..知らんけど、多分そうなんちゃう？ 」


『 ..なんかかわいくない？ 』

「 ..は？ 」


『 治くん、おにぎりとか描きそうにないなあって 』

「 そんなんわからんやん、

人を見た目で判断するのあかんで 」



わかってる、人を見た目で判断してはいけない、

ただ侑より大人っぽくて、
クールな印象のある治くんが、
教科書に落書き、しかもおにぎりだなんて
なんかかわいいじゃん、ギャップじゃん




「 そういや、治 食堂のプリンが好きでな、
お礼に奢ってやったりでもすれば喜ぶかもな 」

『 へえ、プリン好きなんや、
甘いの苦手そうだからなんか意外やな 』


「 ちなみに食堂のプリンは俺も大好きやで 」

『 別にあんたは関係ないやろ 』




書く文字が少し丸くて、
教科書の落書きがおにぎり、
食堂の甘いプリンが好き、

知れば知るほど、
なんだか意外なところが多くて、
そのイメージと違った本来の治くんを
知るのはおもしろくて、

正直、治くんについてもっと知ってみたいかも。




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