すきなものの食べかた【宮治】

すきなものの食べかた：15 ページ15

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「 寒ない？ 」

『 めっちゃ寒いなあ 』


他愛もない話をしながら、
車も灯りもたくさんある通りを治と歩く。

治との居心地の良さに、いつの間にか、
角名くんに言われた言葉なんて忘れていた。


知り合ってそんなに間もないのに、
なんだか治といると安心するし、
何より治とする会話が楽しい。

側から見ればなんでもない普通の会話だけど、
私はそれが楽しくて、嬉しかった。



『 バレー部、かっこいいね 』

「 ん、そう？ 」


『 うん、強豪なのは知っとったけど、
ちゃんと練習見てみたらやっぱり凄いなあ、って 』

「 にしても、外周から体育館戻った時に
Aがおって結構びっくりしたわ 」



痛いところをついてきた。

おかげで心臓止まるかと思った。
嘘をつくのはあまり得意じゃないし、
私は感情がすぐに表情に出てしまう。



『 あ、あはは、バレーは中学までやっとったんやけど、なんか最近親戚のバレー部の子に影響されてそれで… 』

「 へえ、そうなん、それは知らんかったな 」



ごめんなさい、半分嘘です。
罪悪感で押し潰されそうだよ、
今だけ言い訳の天才侑くん、助けて。



「 それで、マネするん？ 」



もう今日だけで何度もされた質問、
これで最後だと思われるけど、
やっぱり治にも訊かれるよね。



『 …しようかな、先輩にも歓迎する、
って、言ってもろたし… 』

「 …ふーん、そうか 」



それだけ言って、いきなり黙り込むから、
私たちの間に流れる沈黙。

なんだろう、なんか変なこと言ったかな


『 あれやな、侑ってバレーしとるとき全然別人みたいやね、普段もあれくらい大人しかったらええのに 』

「 ああ、ほんまな。まあバレーしとるときでも
うるさいときはほんまめっちゃうるさいで 」


空気を変えようとなんとなく
思いついた話題だったけど、
どうやら効果があったみたい。


『 …どう頑張ってもうるさいんやな、あいつ 』

「 子供っぽいとこ多いねん 」

『 わかる、小学生ぽいとこ多い、
でも、今日の侑、いつもと違ってかっこよかったかも 』



相手はあの侑だけど、普段の
子どもっぽい侑と比べて、今日のバレーしてる侑は
なんだか違う人みたいで、全く違う雰囲気を纏ってた

全くときめかなかった、といえば嘘になる



『 ギャップってやつかな、いつもと違って、 』

「 じゃあ、おれは？ 」



治の言葉に、治の顔を見上げると、

何を考えてるのかわからない彼と目が合った

思わず、足が止まった



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