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「あ? ッ!? ……〜ッ、ヒャハハッ! 嘘だろ!」
つまり自分の身の危機だと分かっていても、フェイロンは自分へ飛んでくる物体に笑いを堪えきれなかった。スリルに拍車をかける愉快な事象。
フェイロン目掛けて吹っ飛んできたゼドは一回転して攻撃を試みるも、パアンッ、と弾かれる。
それぞれ一対一の戦況。フェイロンはサイコロをここで使い果たした。チップの残りは200枚程度。これは果たしてどちらに分があるのか。
地上ではラムとイオンの一騎討ちが繰り広げられていた。
「ぐぃいっ……ぐぎゃ……」
「はぁ、は……いい一撃をお持ちだ」
血で作られた短剣がイオンに突き立てられるが、彼女も巨石の応酬を繰り出す。手数と一撃、両者互角の闘いだった。
だが、ラム達にはまだ秘策は残っていた。
「……っ、負けられません!」
顔は見えないものの、立ち姿が既に辛そうなイオンは怒涛の攻めにかかる。
「っ……! っあ゛あ!」
「うおっラム……! 無事か……!」
「君の相手は俺だろう……!」
攻撃の手を持たぬフェイロンの体術でそこそこ削られた体力を故意に減らして、強力な一撃を放つ。デストラクション。
「ッッ゛……クソ……」
会得している体術をもってなんとか耐えたフェイロンは、低い姿勢のまま指を弾く。ハートの8。
「ぜぇ、ぜぇ……今のは効いたぜ」
「自分の回復はしないのか」
「ヒャハ、俺だけ生き残ってどうすんだ……捨てカードは俺だ。その前に……!」
ペテンのダイヤで増えるチップ。
立つのが窮地であればあるほど、燃えるのがギャンブラーの性質。最後の一手は天運次第というわけだ。スペードの1、7を狙う大博打。ガベルの巨頭は目前で引いたのは──
「ダイヤの10……」
ジャララララッと轟音を響かせ大量に増えるチップを尻目に、フェイロンはガベルに吹き飛ばされた。宙に浮く身体は屋上を外れる。
「
地面に叩きつけられる前に。フェイロンは自分の終わりを悟って、増えに増えたチップを全てラムに賭けた。
攻撃、魔攻、命中、素早さの全てが格段に上がったラムだったが、屋外階段を降りてきたゼドにより再び二人に囲まれる。
「もうこれしかない……ね」
再び霧が出る。今度の霧は紫色をしていた。
ギフト。つまりは毒だった。
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