マスター

20. ページ21

「…んっ…？」



「っ、A！？


Aっ！」



「…オッパ…？」



目をしょぼしょぼさせながら、寝ぼけているA。





「車で寝てから何度も起こしたのに全く起きなかったから心配でっ…。」


「…。」




僕がそういうと、バッと体を上げる。





「っ、どこ…？」



「僕の家。」



「今っ、何時…？」



「朝の9時半…。」



「っ、うそっ…。


どうしよっ…。」






パニックになったAはベッドから降りた。



けど、足が縺れてドテッと転ぶ。







「大丈夫っ！？」



「オッパ…どうしよっ、皆絶対怒ってる…。」



「とりあえず事務所行こうっ…！車出すからっ！」



Aの手を引いて急いで駐車場に向かう。








…まぁ、急いだとこで意味ないけどね。



スキャンダルが出た日に、男の家に泊まって朝帰りなんて。




今頃ファンも炎上中だろうしね。








「っ、どうしよっ…どうしよ…。」



「A、僕だけは味方だから。


誰が何と言っても、僕だけは。」



「オッパ…っ。」



「大丈夫、落ち着いて。」





かなり精神的に来てるみたいだな。



だから今、僕が甘い言葉をかければ、きっと僕に完全に落ちるに違いない。









「A、僕ここで待ってるから、辛くなったら戻っておいで。


絶対に一人で抱えちゃダメ。僕を頼って。」



「っ、オッパ…。」



「…行ってきな。」




事務所の裏口の前でAを下ろした。


怖いのか、歩く早さも遅くて、何度も僕をチラチラ見ながら中に入っていった。








…さぁ、後はジへに頼むか。




『今A事務所に連れてきた。』



『うん、こっち来た。』



『どうなってんの、そっち。』







僕がそう送れば、すぐに既読が付く。
































『A、脱退決定。


何か、スキャンダルの相手の男、Aが昨日家に泊まったって嘘の証言したみたい。


それで代表がぶちギレて、PASSION側も私以外皆怒ってる笑笑』



『Aは今どんな感じ？』



『大号泣して謝ってる。


昨日のことは違うって否定してるけど、脱退は確定だからどうにもならないのにね。』










…脱退確定ね。最高じゃん。



相手の男がちょっと意味わからなすぎてクズすぎるのはアレだけど。






これでAはきっと僕のもの。可愛い笑顔も美しい声も華奢な体もぜーんぶね。

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