マスター

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「…私ねっ…


相手の男の人に…捨てられたの…っ。」



「…。」









…ん？





え、え、え？



ちょっと待って。



それって、あのキスしてた野郎にフラれたってこと…？




そんな急展開は流石に想像してなかったから、びっくりして言葉がでない。








「…私が自主練してるの見て、一緒に残って優しく教えてくれたの…。それに、精神的にも弱ってた時期だったから色々話聞いてくれて…それで、好きになっちゃって…。


付き合おうって言葉もないまま、周りに内緒でキスしたり…そういう関係になって…」



「っ、え、やったの？」


「…



うん。


その時に沢山愛してるって言われたから、私、勘違いしちゃって…っ。」






泣いてるAには申し訳ないけど、まさか相手の野郎とAがそこまでの関係に発展してると思ってなくて頭の中がぐちゃぐちゃになる。



僕のAはそんなにあいつに汚されてたの…？






Aの体を見たやつがいることに怒りと悲しみが入り交じる。








「…記事が出て、連絡したの…。


迷惑かけてごめんなさいって、しばらく会えないですって…。




そしたらねっ…"お前なんか最初から遊びだよ、本気にしてんの？ウケる"って…っ。」



「…っ、え…。」


「バカだよねっ…私。」






…もしかしてこんなに泣いてたのってネットの炎上じゃなくてその男のこと…？



何それ。


こんな泣くほど好きだったの？




僕みたいに純粋にAを愛してる人が報われなくて、何でクズみたいな男がAとキスやそれ以上が出来るんだよ。



…はぁ、まじイラつく。





お金も無さそうな小汚ないクズより、金持ちでそこら辺の男より顔面もよくてAを誰より愛してる僕のが完璧にAに相応しい。






「…


バカだよ、Aは。」



「…っ。」



「今隣に、Aを世界で一番本気で愛してる男がいるのに、クズを選ぶんだもん。」



「…えっ？」







Aの腕を掴み、自分の方に体を引き寄せるとそのまま抱き締める。



…受け入れたくはないけど、過去が変えられないなら僕が上書きするしかない。




あいつとの思い出が無くなるぐらい僕しか見えなくさせるしか。







「…ごめん。


話聞いてたら、ただのファンじゃいられなくなった…。



ずっとアイドルのAだけを愛そうって我慢してたけどもう限界。


…好き、愛してる。」




体を離すと、僕はAの唇にキスを落とした。

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