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「待って、コーイチ」


玄関の扉の前で私は彼の手を止めた。


「やっぱり、帰る」


恐る恐る彼の瞳を見れば、「なにを今さら」なんて言われてる気がする。


さっき楽屋で言ってた「貸すもの」も本当はないわけだし

彼の家に来たところで何をするっていうの?


私はもう昔の私じゃないんだぞ。

冷静になれ、私。



「…一人で帰るつもりなん?」



ぼそっと彼は言う。

確かに夜は遅め。

一人で怖くないかと聞かれたら嘘になる。


口を開けばボロが出そうだったから、無言で彼の手を離す。



「帰るよ」


「…あかんて」



そう言ってまた手が繋がれる。



「俺、帰す気ないんやけど」


「は、」



思わず指をピクッとさせると、さらに強く握られる。



「困らせんといて」



すると強引に扉の向こうへと連れて行かれ

途端に静けさが襲う。



あっけなく踏み込んでしまった彼の部屋

彼のにおいが鼻をくすぐる。


変わっていない様子が私を過去に戻しそうで怖かった。



「明日遅いからええやろ」

「そういう問題じゃ」

「じゃあ何なん」


さっきまで繋いでいた手が上に上がり

頬を滑って、後頭部に添えられる。


こ、れは。


刹那、

顔を傾けてくる晃一がいて。

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作者名: | 作成日時:2017年11月6日 17時

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