検索窓
今日:2 hit、昨日:9 hit、合計:91,695 hit

:26 ページ26

______「ムリやあ」




泣きそうになりながらのダンスレッスン。


周りはどんどんうまくなっているというのに

俺だけなんだか置いてけぼり。




弱い声で呟いていれば

背中を勢いよく誰かに叩かれた。



「なんやねん、」



一人にさして、と思ったが

叩いてきた人物がまさかの優等生、Aちゃんやった。




「え、なん、」



「タカシくん、一緒に練習しない?」



「う?え?」




当にレッスンは終わっているというのに

まだ着替えもせずに俺を見つめ続ける。




「タカシくんと一緒にやりたいんだけど、時間ある?」



「ある…けど」




なんで俺なん?

馬鹿にでもしにきたん?


この子の意図が読めないまま

同意をしてしまった。


絶対性格悪い。

自分が踊れるからって。


未来の自分からしたら、ただの僻みなわけやけど。




「タカシくん、背も高いし、脚も長いし、顔もきれいだし

ダンスするのにもってこいな見た目だよね」



羨ましい、と最後に付け足す。

そんな様子に驚きながらも、彼女はなんの躊躇もなく俺のことを褒めてくれた。


俺とAちゃんだけが残るレッスン室に

二人の会話が響いた。




「…そんなんあっても、才能ないから」



相変わらずな俺はそんな返答しかできなくて。


自分でもわかってるはずなのに

うまく表現ができない。




「そんなん、なんて言わないでよ」




口調がきつくなったと思いきや

表情は優しいまま。


この子、今どういう感情なんだろうと

頭の隅で思った。




「ここにいる理由、私と同じじゃないの?





才能だけでどうにかなると思う?」




履き潰されたレッスンシューズを見て

この子には敵わへんな、って。


中坊でアホながらに

自分の愚かさを知った。

27→←:25



目次へ作品を作る
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.7/10 (67 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
250人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名: | 作成日時:2017年11月6日 17時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。