影と月 (ページ11)

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無理やり押し付けられた「貸すもの」は

皮肉にもあのアーティストの最新のアルバムで。

コーイチまだ好きなんだ。

音楽プレーヤーに入っているものの、私はなかなか再生はしていなかった。

「逃げ道できたやろ」

優しさなのか、皮肉なのか

はっきりはしないけどとりあえず受け取っておいた。

ちなみに結局彼の自宅に泊まったわけだが

あの後は何も起こることはなかった。

こっちは全然眠れてないけど、

「ふああ」

誰もいないと思って

隠さずに大きな口を開けて放ったあくびは

きっちりと見られていた。

「大きいなあ」

「った、タカシ？！」

「おはよー」

「お、はよ」

もう夕方なんだけどね。

昨日はメイクやらセットされていた容姿も、すっぴんのタカシは可愛い男の子だった。

さらさらしている前髪が少し邪魔そうに思える。

「なんで今日二人なんやろ」

「そうだね。なかなかないね」

そう。

今日マネージャーから呼び出されたのは私とタカシの二人だけ。

グループの話なのか、そうでないのか。

待ち時間まであと少し。

暇だったから隣に座るタカシの脚に対抗して

私も脚を伸ばしてみるが、到底届かない。

「届いてへんで～」

「知ってます～～」

そんなくだらないことをしていればマネージャーが部屋に入ってきた。

「二人ともお疲れ、今日は嬉しいニュースだよ」

「お？」

「お？」

二人で顔を見合わせてから、聞いてみる。

「お仕事？」

「そう。二人のお仕事」

「え～？俺とA？」

なんやろ～、と彼がまた呟いたところで答え合わせ。

「…二人が出演するドラマが決定しました！」