雨のとっけん。 ページ10
思い出話に花を咲かせて、楽しかった夕食も終わってしまった。
「御馳走さまでした。いろいろお世話になってしまってすみません。」
「いいんだよ。前も今日もあやめちゃんに奏がお世話になっていたからね。ほんのお礼だよ。」
「あと、これを見て。あのときのスミレの花、今は押し花になっているけど……。」
そう言って雨宮のお母さんが見せてくれたのは押し花になったスミレの栞だった。
「あの、ほんとにありがとうございます。」
ずっと、こうして覚えてくれたことに少し涙が出そうになった。
嬉しいなぁ。
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「じゃ、俺、水無月送ってくよ。」
「そうね。女の子一人じゃ危ないし……。」
帰りは雨宮が送ってくれると言ってくれた。
……嬉しいけど、申し訳ない。
「えっと、有難うございました。」
「いーのよ。また来てね。」
と、雨宮のご両親に見送られて外に出た。
「星、綺麗だな。」
帰る途中、長めの沈黙を破ったのは雨宮だった。
「そうだね。雨止んだから」
「あのさ、さっきの昔話。別に忘れてていいからなっ?」
「なんで?まぁ実際さっきまで忘れてたんだけどね。もう忘れないよ。」
「いや、忘れてよ。俺、ずっと水無月に頼ってばっかでかっこ悪いし……。」
なーんだ。そんなことか。
「雨宮はかっこ悪くないよ?」
「どこがっ。」
「うーん。詳しく言うと、サッカー部の副キャプテンで仲間から信頼されてて、いつも笑ってて、運動が何でもできて、さっきわかったのは、家族思いってことでしょ?あと……」
「わかったって、ありがと。人に言われると恥ずい」
そういって、雨宮は顔を真っ赤にさせた。
もしかして、私、今すごく恥ずかしいこと言ったかも。
そう意識したら私まで体温が上がっていくのを感じた。
でも、やっぱりあと一つ。これは言いたい。
「もう一つあるよ。毎日、私のどうでもいい話を聞いてくれて、一緒に登校してくれること」
「当たり前じゃん。水無月と話すの楽しいもん」
そう笑ってくれる雨宮を見て、また好きだと自覚した。
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「送ってくれてありがとう。」
「おう。じゃ、また明日な。」
また明日と言われて少しドキンとした。
あー、もううるさいこの心臓。
ねぇ。絶対君は無意識でそんなこと知らないんだろうけど。
「星、綺麗だな」
って、少しだけ期待していいですか?
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作者名:Biske | 作成日時:2017年6月24日 15時