雨のはじまり。 ページ2
6月7日。
今日から季節は梅雨にはいるらしい。
朝起きるとニュースがそれを伝えていた。
「ねぇママ。傘、必要かな?」
「うーん。午後から降るみたいだから持って行った方がいいんじゃない?」
「そうだね。」
出来立てのトーストを頬張りながら、まだ雨の降る気配のない空を窓越しに覗いていた。
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「あやめ。早く支度をすませないと遅れるよ」
のんびり朝ごはんを堪能していると、父が声をかけてきた。時計は8時をさしている。
すっかり綺麗になったお皿を片付けて、私は家を出た。早くしないと遅れてしまう。
「んじゃ、いってきまーす。」
まだ、青空の空をみて私は足を進める。
今日からまた1週間ある学校を少し恨みながら行くとアイツがいた。
「おはよー。雨宮。」
「はよ。遅くない?今日。」
そういってきたのは同じクラスの雨宮 奏。
別に付き合っている訳ではないけれどとあるきっかけから登校するときはだいたい一緒。
……付き合ってたら、いいのに、なんてね。
それでも、この時間だけは2人だけのものだと思うとこれ以上に図々しいことは考えられない。
彼が、私のことを思ってる確率なんて雀の涙程度のものだ。
「ちょっと朝ごはん食べすぎた。」
「朝から食い意地はってんなー。」
「はってないしっ。」
若干のデリカシーのなさを感じながらも、朝一番に会う好きな人の笑顔にそれはかき消された。
あの笑顔だけは反則。
「ん?どーした?」
「なんでもないっ。」
「1人でクルクル表情変えてるとヤバイやつと思われるぞ?」
雨宮のせいだよバーカ。
「失っっ礼なー。」
「ごめんごめん。」
「誠意がこもってませんね。もう1回。」
「サーセン。」
少しかったるさそうに謝る彼にきゅんとしたのは秘密。
好きになったらなんでもかんでもキラキラして見えるだなんてほんの冗談だと思っていたけれど、案外、自分がその立場になると納得せざるを得ない。
そんな自分に苛立ちを覚えつつも足を進めた。
好きな人の隣で、
まだ、青い空の下を歩く、
空の色と同じお気に入りの水色の傘を持って。
うれしくて爆発してしまいそう。
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作者名:Biske | 作成日時:2017年6月24日 15時