元オタク、文豪世界に転生しました (ページ10)

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十話ページ10

「よぉ、芥川。いつにも増してボロボロだな」

医務室のベッドで休んでいると見慣れた黒帽子の人が歩いてきた。

「中原さん」

中原中也。こっちは知っているが、向こうからしたら初めましてである。

「ん、誰だ？コイツは…」

そう言いながらこっちに歩いてくる中也さん。

「えっと、新しく太宰さんの部下になりました。AAです」

「あぁ、前アイツが話してた…そうか、お前がAか…幹部の中原中也だ。よろしくな」

驚くことに向こうも私の事を知っているらしい。良い笑顔であいさつをしてくれたので、同じく笑顔
で返しておく。

「お願いします。中原さん、」

「中也で構わねェよ」

「わっ！」

中也さんが頭を撫でてくる。頭が…ぼさぼさ…

「ふふっ…じゃあ中也さん。よろしくお願いします」

乱れた髪を直しながら返すと、医務室のドアが開いた。

ガチャ、

「げ、中也…何でいるのさ」

そこにはとてつもなく嫌そうな顔をした太宰さんがいた。

「いつも通り芥川の様子を見に来ただけだっての。お前こそなんで…いつもは芥川がボロボロでも見
にこねぇ癖に」

「Aを見に来たの。初めての訓練だったしね」

中也さんいつも芥川くんの事見に来てるんだ…優し。

「Aの訓練は面白かったよ。まさかああ来るとはね…それに対して、芥川くんはなにも変わらな
い」

「ッ…僕とて上達は」

「してないでしょ」

黒太宰さんは相変わらず芥川くんに厳しいらしい。絶対零度の視線を注いでいる。

「ったく、ほどほどにしておけよ。んじゃ俺は首領んとこ行ってっから」

「はいはい、私もあとで行くよ」

面倒くさそうに手を振った太宰さんはこちらに歩いてきた。

「A、怪我の調子は？」

「めちゃくちゃ痛いです…二度と訓練したくない」

二の腕をさすって蹲ると、隣から『この弱者め』と言わんばかりのオーラが感じ取れる。怖い。

「そういう訳にもいかないけど。次の訓練は明日。それまでに二人とも体調を整えておいて」

「承知」

「はい…」

真顔で頷いた芥川くんと肩を落として頷いた私を確認した太宰さんはコートを翻して去っていった。