おかえり【kn】 ページ35
隣の席のきんときくんはクラスで中心のグループの1人で運動ができてかっこよくて、皆によく好かれていた。
きんとき、ってあだ名で呼ばれていてとにかく人に好かれる人だった。
だった、のだ。
彼は、死んだ。
呆気なく、死んだ。
私はクラスでも端にいるような女だったし、ついこの間席替えで初めて隣になっただけ。
私と席が隣になって2日ぐらいして死んだから、多分話したのは3回ぐらいだけだろう。
勿論クラスの皆泣いていた。特にきんときくんと仲の良かった男の子とか女の子とかはみんな泣いていたし、担任だって泣いていた。
私は、正直なことを言えば関わりだって少なかったし、彼のことが恋愛的に好きだった訳でもない。
だから、泣かなかった。
それなりに喪失感はあったものの、それは多分本当に人が死ぬという事実を目の当たりにした動揺と似たようなもので、彼の死自体にはあまりショックを受けなかった。
彼が死んで、クラスの皆で葬式に行って授業が2日ぐらい無かった後、日常は当たり前のように帰ってきた。
クラスの空気は重たく、中心グループの男女も静かにしている為教室は深海の底のように冷たく何も無かった。
そんな中彼が死んで1週間ほど立った頃、日直の番が回ってきた。
私の学校では日直は横の席の人とする事が決まりであり、勿論私も彼とする予定だった。
しかし私の未だに撤去されない空の机を横目に私だけが日直となった。誰も何も言わず、何となくこのクラスの冷たさを感じる。
薄暗い教室で、1人で日誌にサラサラとシャーペンを走らせる。
いつも放課後は、彼のいたグループが教室を占領していたが、彼が死んだ後そのグループが集まって遊ぶこともなく本当に静かだった。
テキトーに埋めた日誌を持って席を立とうとした時、ふと教室の扉が開いた。
｢Aさん、いた。｣
｢俺今日日直だったでしょ？ごめんね。｣
きんときくんだった。
はっきりと、見えた。
響いたのはぐっ、と喉を抑え込むような私の声。
悲鳴も何も出なかった。
だって、彼は、
本当に、まるで、生きているかのように。
小麦色の肌で、いつもの様に、生きていた頃のように笑って、笑顔で、優しそうに泣きぼくろをくしゃっ、とさせて。
私は、葬式に行ったのに。
｢後、どこ書けばいい？｣
｢…いいよ、もう書き終わったから。｣
｢うわ、それはごめんね。｣
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 537人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ビー玉(プロフ) - Twitterフォロー失礼します！ (8月16日 1時) (
レス) @page32 id: 7a07f59bfb (このIDを非表示/違反報告)
シス(プロフ) - momijisandazoさん» 申し訳ありません…！今リンクを貼り直しました、ご確認して頂けると助かります！ (2022年3月21日 20時) (レス) id: 3c4da15d1e (このIDを非表示/違反報告)
momijisandazo(プロフ) - ツイフィの方が削除されていたのですがこの場合はどうすれば良いでしょうか？ (2022年3月21日 20時) (レス) @page24 id: def6b7fbc2 (このIDを非表示/違反報告)
シス(プロフ) - とまとさん» ツイフィ閲覧お願い致します (2022年2月2日 21時) (レス) id: 3c4da15d1e (このIDを非表示/違反報告)
とまと(プロフ) - Twitterフォローさせていただきますｯ(( (2022年2月1日 23時) (レス) @page10 id: 9799237945 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
