404 not found 1 ページ5
雲一つない青空の下蝉の声が開いた窓から飛び込む教室で、
私と天馬くんは昼食をとっていた。
ねえ、天馬くん。
私はずっと前から、ここにいたのかな。
そう目の前にいる天馬くんに尋ねたら、凄くびっくりした顔をされたけど、
デコピンされて笑われた。
「……もー、急に真剣そうな顔になるから緊張したじゃんかー!」
「や、冗談じゃないから! 本当に何も思い出せないの!」
「えー、ひどいよA!
……それじゃあ去年、俺がここで告白したことも覚えてないの?」
「こ、こく……!?」
水野瀬A、２年２組33番。
私は、同じクラスの松風天馬と付き合っているらしい。
らしいというのは、私が昨日までの記憶が全くないからだ。
頭を打ったわけでもないのに。
完全に記憶がない訳じゃない。クラスメイトの名前や授業の内容程度は分かる。
目の前の存在も分かってる。
でもこの街で生活した記憶が全くないんだ。
どう説明したらよいのか頭を悩ませていると、彼の顔が近付いてきた。
「んー、別に熱はないなー」
「ちょ、近いって天馬くん! 周りに人いるのに……」
ほら、前の席で狩屋くんがニヤニヤしてるじゃん!
「今日もお熱いですねー」って小声で言ってるの聞こえてるからね!
「そんなこと言ったって、前におれが熱っぽい時、こうやっておでこ合わせてたじゃん」
「私が?」
「うん。俺一生忘れないなぁ、普段はあんなことしないAがさぁ」
「いやいや、え、いやそうなのかもしれないけど!」
駄目だ、彼のペースにのせられちゃっている。
説明以前に私自身もよく分かってないんだし。はぁ、とため息を吐いた。
「A、疲れてて頭がごちゃごちゃしてるだけなんじゃない?」
「疲労だけでここまで重症になるかな……まぁそうだといいけど」
「 ……あ、そうだ。
A、商店街の近くの踏切、近道だからって絶対通っちゃだめだからね」
さっきまで笑っていた彼は急に真剣な顔になった。
どこかただ事じゃない気がして、私は尋ねた。
「え、どうして?」
「最近あの近くに不良がたまってるらしいって先生言ってただろ?
出来るだけおれも一緒に帰るようにするけど、一応ね」
そう言って天馬くんは小指を突き出してきた。
指切りげんまんしてってこと?
違和感を覚えつつも、私は小指を彼の小指に絡めた。
「ゆびきりげんまん、うそついたーらはりせんぼんのーます」
「ゆびきった!」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 23人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
黒音_幻月(プロフ) - フェルスさん» そう言って頂けて…書いてる側としてとても嬉しいです…リクエストも募集中なのでこれからも読んで頂ければ幸いです。ありがとうございます! (2020年7月5日 6時) (
レス) id: 71e1357481 (このIDを非表示/違反報告)
フェルス - ▽推しキャラに松風天馬さんを追加しました (2020年7月4日 12時) (レス) id: 01ec8b1b6b (このIDを非表示/違反報告)
黒音_幻月(プロフ) - iさん» そう言って頂けて本当に嬉しいです…!『拝啓』は二次元の中から密かに想いを寄せる天馬くんを描きました。天馬くんらしさをこれからも出していけるよう努力させて頂きます。ありがとうございます…! (2020年4月24日 21時) (レス) id: 71e1357481 (このIDを非表示/違反報告)
i - 書き方お上手ですね…！特に『拝啓』のやつなんか寺崎さんボイスで脳内に流れてきました。それくらい天馬くんらしさが出てます！ (2020年4月23日 0時) (レス) id: 64965fab23 (このIDを非表示/違反報告)
黒音_幻月(プロフ) - 円堂天利さん» ええ、もちろんです!いつでもお待ちしていますね! (2020年3月8日 21時) (レス) id: 71e1357481 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：黒音_幻月 | 作成日時：2020年2月29日 16時
