君の涙はおれが拭う ページ3
人間、生きている間に1回くらいは挫折する事があると思う。
放課後の教室には夕焼けが差し込んでいた。
私以外には誰もいない。だから泣いても大丈夫だと思っていた。
「A……?」
全く大丈夫じゃなかった。
一番こんな顔を見られたくなかった人物が来てしまったから。
顔を上げなくても心配している事が伺える。
慌てて目元を擦って、私は天馬くんの方を向いた。
「どうしたの? 何か忘れ物?」
「そうだけど……Aの方こそ、何があったの」
「ううん何でもないし、これ花粉症だしっ。私もう帰るから」
鞄を掴んで彼の横を通り抜けようと試みる。
だけど、すぐに空いた方の手を掴まれてしまった。
「……本当、何もないから」
「そんなことないだろ。
Aはいつもおれは鈍感って言うけど、このくらい分かるから。
ねぇ、教えてよ」
そんなこと至近距離で言われたら、引っ込んだ涙がまた溢れてくる。
「……っ、なんか最近、どんどん周りに、置いて行かれている気がして。
自分が思ってたよりも何もできないんじゃないかとか。
不安で、怖い……」
私がいつもからかいをしかける天馬くんに、
(背を向けているけど)こんな顔も、弱音も見せたくなかった。
みっともないのは分かってる。でも涙が止まらない。息が苦しい。
急にこんな事暴露されても、天馬くんは困るだけだ。
「おれも、周りの事ばっか目に入って、焦ることはあるよ。
こっちが強くなっても、相手はその上をいく。
でもおれはキャプテンだから、諦めちゃだめだった」
「……うん」
「そんな時に、おれの隣の席の子が言ったんだ。
『昨日の自分を越えてる』って。
昨日知らなかったことや、出来なかったことが、
今日、明日、ずーっと先には体に残ってるって。おれ、確かにそうだなって思った」
「……だから」と言いかけて、彼は私の手を離した。
代わりに、グッと後ろに引っ張られた。
「Aがいますごく頑張ってることは、昨日の自分に勝ち続けてるってことなんだよ。
自分を責めないでよ、ね」
後ろから抱きしめられて、身長は私の方が高いはずなのに。
今の彼は、私が思ってたよりずっと大人に見えた。
「家で泣くくらいならさ、ここで泣ききって行きなよ」
俺しか、いないから。
彼は私が泣き止むまで、背中を優しくさすってくれていた。
(Aには助けられてばっかだから、おれだって、助けたいんだよ)
・
円堂天利さんありがとうございました。
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黒音_幻月(プロフ) - フェルスさん» そう言って頂けて…書いてる側としてとても嬉しいです…リクエストも募集中なのでこれからも読んで頂ければ幸いです。ありがとうございます! (2020年7月5日 6時) (
レス) id: 71e1357481 (このIDを非表示/違反報告)
フェルス - ▽推しキャラに松風天馬さんを追加しました (2020年7月4日 12時) (レス) id: 01ec8b1b6b (このIDを非表示/違反報告)
黒音_幻月(プロフ) - iさん» そう言って頂けて本当に嬉しいです…!『拝啓』は二次元の中から密かに想いを寄せる天馬くんを描きました。天馬くんらしさをこれからも出していけるよう努力させて頂きます。ありがとうございます…! (2020年4月24日 21時) (レス) id: 71e1357481 (このIDを非表示/違反報告)
i - 書き方お上手ですね…！特に『拝啓』のやつなんか寺崎さんボイスで脳内に流れてきました。それくらい天馬くんらしさが出てます！ (2020年4月23日 0時) (レス) id: 64965fab23 (このIDを非表示/違反報告)
黒音_幻月(プロフ) - 円堂天利さん» ええ、もちろんです!いつでもお待ちしていますね! (2020年3月8日 21時) (レス) id: 71e1357481 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：黒音_幻月 | 作成日時：2020年2月29日 16時
