かっこいいとこだってみせたい 2 ページ18
そこまでして私は気付いた。
私、虫無理だったことに。
「……ああああああああああああああああ!!!」
外で生きている分にはまだいい。
だけど室内、同じ空間で同じ空気吸っている事実がもう耐えられない。
というかどこに行ったの!?
姿が見えないのが一番怖いんだってば……ああああ……。
ぐるりと周りを見回すも姿が見えない。
そういえば。
メスは潰されたら卵を周囲に飛び散らせるって話、
どこかで聞いたことある。
それは侵入より重罪。
この部屋が大惨事阿鼻叫喚地獄絵図になる。
潰すのは止めよう、深呼吸して広辞苑を床に置いた。
……じゃあどうやって駆除しろと?
「ただいまー! Aごめん、ハイパーカップしかなかった
……ってどうしたの!?」
もうだめだ。
得体の知れないものに私はあっけなく敗北してしまった。
ぺたりと座り込んでいたところを、天馬くんが慌てて駆け寄ってきた。
「ごめんね天馬くん、私、守れなかったよ……」
「な、何を……?
ってあ、ゴキブリだ!!」
「あああああああやめて言っちゃだめだよそんな汚いやつ口にしないで!!!」
「こんな大きいの久しぶりだなー、もう夏も近いもんねー」
「無理無理いやだ天馬くん許してごめんなさいごめんなさいぃ!!」
「ふふ、もー大げさだって。
待っててA。
すぐ助けてあげるから」
優しくそう言うなり、彼は立ち上がって戸棚からスプレーを取り出し、
勢いよく噴射した。
「よし。
A―、ティッシュとアイス入ってたビニール袋ちょうだい!」
「う、うん。どうぞ……」
アレの死骸を見ないよう天馬くん以外の全てにモザイク処理を施し、
手渡した。
彼は手際よくアレを包み、ビニール袋に入れてきつく縛った。
「ゴミ箱に入れると、中で卵が孵化する事もあるんだって」
「そ、そうなんだ……にしても慣れてるね」
「んー、おれ沖縄住んでたからかな。
虫にも命はあるけど、ゴキブリは病原菌を運ぶから仕方ないんだよねー」
今度また見つけたらおれに任せて!と胸を張る彼に、
ちょっとときめいてしまったり。
・
(かっこいいとこだって、見せたいんだからね。
だって、おれ、Aのこと___)
溶けかけたアイスを美味しそうに食べる彼女を見て、
おれはほんの少しだけ、ゴキブリに感謝した。
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黒音_幻月(プロフ) - フェルスさん» そう言って頂けて…書いてる側としてとても嬉しいです…リクエストも募集中なのでこれからも読んで頂ければ幸いです。ありがとうございます! (2020年7月5日 6時) (
レス) id: 71e1357481 (このIDを非表示/違反報告)
フェルス - ▽推しキャラに松風天馬さんを追加しました (2020年7月4日 12時) (レス) id: 01ec8b1b6b (このIDを非表示/違反報告)
黒音_幻月(プロフ) - iさん» そう言って頂けて本当に嬉しいです…!『拝啓』は二次元の中から密かに想いを寄せる天馬くんを描きました。天馬くんらしさをこれからも出していけるよう努力させて頂きます。ありがとうございます…! (2020年4月24日 21時) (レス) id: 71e1357481 (このIDを非表示/違反報告)
i - 書き方お上手ですね…！特に『拝啓』のやつなんか寺崎さんボイスで脳内に流れてきました。それくらい天馬くんらしさが出てます！ (2020年4月23日 0時) (レス) id: 64965fab23 (このIDを非表示/違反報告)
黒音_幻月(プロフ) - 円堂天利さん» ええ、もちろんです!いつでもお待ちしていますね! (2020年3月8日 21時) (レス) id: 71e1357481 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：黒音_幻月 | 作成日時：2020年2月29日 16時
