貢ぎ物 ・紫 ページ6
夜も更けてきた頃に村上さんから珈琲を頼まれ、私は村上さんの部屋へと向かった。
コンコン
「失礼します」
『あい』
部屋の前に着くと紫色のドアをノックしてゆっくりと開ける。
「珈琲お持ちしました」
『お、待ってたわ〜』
机に広がる仕事の資料などを退かすと手招きで私を呼んだ。
「お仕事遅くまでお疲れ様です」
『全然大したことあらへんよ』
「いつもお忙しそうですから…」
『なんや心配してくれとるんか?』
「もちろんです!使用人として主の健康も支えるのが仕事ですから」
珈琲をカップに注ぐと机に置いた。そんな私をじっと見つめていた村上さんと視線が重なると、村上さんは首を傾げた。
「な…何か…?」
『あ、せやせや!渡すもんがあんねん』
何かを思い出した村上さんは大きな鞄を自分の膝の上に乗せて漁り出した。
『まずはこれか…ほら!美味そうやろ?』
渡されたのは超有名和菓子屋の大福セット。
「美味しそうです…」
『あと…これもや!よう昼寝しとるからな…そんな時に使えるやろ?』
暖かそうで肌触りが良すぎるブランケット。
『それとな…』
「あの…!もう…大丈夫ですよ?」
『なんでや。まだあんねん』
「今日はこの辺にしときましょ?」
『ん…じゃあ最後に明日届くから受け取っとけ』
渋々鞄を下ろして最後に私の前に差し出したのは薄い1枚の紙。
「なんですかこれ…?」
『メイド服』
「え?!」
『汚れてきたやろ…ここも落ちてへんし…足らんやろ?』
「いや…足らないわけじゃ…」
『よろしく頼むで』
村上さんは満足気に微笑み珈琲を口に運んだ。
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作者名:夜 | 作成日時:2021年11月10日 20時