嘘は執着の始まり・紫 ページ23
お風呂に入る支度をして使用人専用(私だけの女風呂だけど)に向かっていれば、裏口のドアが開いていた。
戸締り忘れだと思い近づくとツンと鼻を刺激した煙たい匂い。
私はドアをゆっくり開けて外を見ると、階段に腰掛けて煙草の煙を吐き出す村上さんが居た。
「村上さん…？」
『っ…おぉ…びっくりしたわ…』
「珍しいですね…煙草なんて」
村上さんは振り向くと灰皿に灰を落とす。
『まぁな…たまに吸いたくなんねん』
「やっぱり禁煙って難しいんですか？」
『慣れれば全然平気やで。今日はほんまにたまーにやから』
と言いながらも灰皿にはもう既に2本捨てられている。
「吸いすぎは良くないです」
私は隣に腰掛けて置いてあった煙草の箱とライターを取り上げた。
『ストレス溜まっとんねん…』
「お話聞きますから…やめましょ？」
『……返してくれ』
「でも…」
『ﾁｯ…』
村上さんは舌打ちを落とすと髪の毛を荒々しく掻きむしった。
そんな見たことの無い姿に少し距離を取ろうとすれば腕を強く掴まれた。
『横山といつから付き合ってんねん…お前は1人のもんやないんやぞ！？』
そのまま押し倒され村上さんは声を荒らげて私の襟に掴みかかった。
その反動で倒れた灰皿の金属音が静かな庭に響き渡る。
「つ…付き合ってなんか…ないです…」
『俺には分かんねん…横山がお前に手を出したってことぐらい』
「それは…」
『はぁ…すまん…お前さんに当たってもなんも変わらんよな』
私から離れた村上さんは立ち上がると、私から視線を逸らしたまま立ち去ろうとする。私は咄嗟に腕を掴んで引き止めた。
「村上さん…私は横山さんだけのものになろうなんて思ってないです。私はただの使用人ですか…っ！」
掴んでいた手を勢い良く引かれると押し付けられた唇。腰と頭に回ってきた手によって私が離れられないように固定された。
こじ開けるように深い口付けを落とされると、ゆっくり離れていった熱い唇。
「はぁ…っ…村上さん…」
私は腰が抜けてしまい、村上さんの腕に支えられながら胸に寄りかかった。
『風呂…行くか』
「え…」
『安心しろ…俺は嫉妬なんかで手を出すつもりはあらへん』
軽々持ち上げられた身体に私は村上さんの胸に頭を寄せた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 108人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：夜 | 作成日時：2021年11月10日 20時
