愛情なんて・黒 ページ18
「えっと…その…」
綺麗なスーツを着て、整えられた黒髪姿で私をただじっと見つめてくる横山さん。
『似合ってる』
「え…」
私は黒いドレスに綺麗で高そうなアクセサリーを身につけ、慣れないメイクとばっちりお洒落に結われた髪型。
「本当に…私が…」
『女に口説かれに行く訳やない。俺は仕事の話をしたいねん。やから…お前が必要や』
そっと手を引かれ引き寄せられると私の手を腕に回させた。
『ええか?お前は今から俺の恋人や』
綺麗な女性やとても偉そうな方までが入っていくホテルのパーティー会場。
私は高いヒールで頑張って横山さんの腕を掴み歩き出した。美味しそうな料理がテーブルに並び、横山さんは慣れた手つきでウェイターからワインを貰うと、私に差し出した。
『持ってるだけでええ。すぐに終わらす』
「は…はい」
横山さんは足早にある人物に近づくと挨拶を交わした。偉い人とも対等に話せる横山さんの凄さに私は感動してじっと見上げてしまっていた。
〔そちらのお嬢様は?〕
『彼女は俺の恋人です』
〔恋人…横山さんにそんな方がいらっしゃったとは驚きですね〕
軽く会釈して挨拶すると、男性の隣に居た奥様らしき方が私の前にお皿を差し出した。
〔良ければ女同士お話しません?〕
「え…あ、はい…!」
私は横山さんから離れ女性と共に料理を取りに向かうと、少し離れた場所で女性とグラスを合わせた。
〔横山さんの恋人なんて幸せものね〕
「あ…ありがとうございます」
〔どんな手を使ったの?〕
「え?」
〔冷酷でどんな女性でも口説けたことは無い。私も一度試してみたけれど…全くの無視。ねぇ貴方はどうやったのかしら?〕
「そうですね…あ、手料理を作ってあげたら喜んでくださいます!」
〔手料理…あとは?〕
女性は私の顔をじっと見つめたまま質問を送り続けてくる。
答えに迷っていると、私達の周りには女性達が集まっていた。
〔貴方が横山さんを口説けた女?〕
〔失礼だけど…貴方には横山さんは似合わないわよ〕
いきなり現れた女性達は私の姿を見てクスクスと笑い始めた。
〔どんな色目を使ったのか教えなさいよ〕
「私は…何も…」
すると隣に居た女性が私の手を掴んで女性達の前に見せびらかした。
〔見てこの指…手料理だがなんだか知らないけど…汚いわよ〕
〔こんな手で横山さんに触れてるなんて…最悪〕
私は手を払い除けると耐えきれなくなり後ろに後ずさる。
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作者名:夜 | 作成日時:2021年11月10日 20時