コスパ最強系男子と涙 ページ42
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…どっちだ。
そんなことを考えると自然に手に力が入った。
「_______ソンハンビン練習生です。」
よく知った名前が呼ばれたけれど、他人の名前。
…ひょっとしたら、今回はと期待したが、外れてしまったようだ。
期待するだけ無駄、って前の俺は言ってたのに。
どうせ、今更足掻いたって何も変わりやしないと、
どこか遠目で見てたのにさ。
……泣きそうな練習生たちを見たら、彼らの分まで俺が走り切らなくちゃ、って思ってしまうんだよな。
「クォンA練習生、どうですか感想は。」
『……ほんっとに、…悔しいです。』
俺、今まで悔し涙なんて一滴も出ずに、
"彼奴の心は渇いてるな"って言われ続けてきたのに。
今までの日々が思い出されて、
あぁ、もっとあの時本気出せば。
あの輝く椅子の主人は、俺だったのかな、なんて
そんな馬鹿げたことを考えてしまうくらい。
『……次は、嬉し涙にしてみせます、』
「そうなることを僕も願っていますよ。」
28位の発表を前に、沈んだ空気を感じ取った。
…こんな残酷な発表の仕方は、どうかしているとつくづく思う。
悔し涙に紛れて、
この瞬間がどうか終わらないように、って
終わるな、俺はまだ。
人数が減るのを見たくないんだよ。
大好きな仲間たちがいる時間が
どうか後少しだけ続いてくれと
柄にもなく、神様に願ったのだった。
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作者名:笹野。 | 作者ホームページ:https://twitter.com/sasanopandadesu
作成日時:2023年3月15日 23時