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｢あ、おかえりなさい!!｣
僕を見つけると、笑って迎え入れてくれる。立ち上がって、僕の前まで来てくれる
｢どうしたの？れいく、ん･･･っ｣
目の前に来てくれた彼を口付けを落とす
｢んんっ、はぁっれ、くん･･･？｣
｢しても良い？｣
｢･･･うん｣
顔を俯かせたけれど、彼は僕の質問に頷いた。奥の部屋にAを連れて、一緒に布団に入り、濃くなったAの匂いを堪能する
｢良い匂い｣
｢はずかしいよ･･･｣
匂いを嗅がれるのが恥ずかしいらしく、身をよじって離れようとする。それを良しとせず、彼を強く抱き締めた
｢愛してるよ、A｣
｢･･･うん、｣
愛してると伝えても、彼が愛してると返してくれない。人を愛す事が億劫なのだろう。僕だってそうだ。親しい人を作る事が億劫なのだから
それでも、僕はそれ以上の関係を望んでいた
｢なぁ｣
行為の後に眠りに落ちそうな彼に声を掛ける
｢ん･･･なに･･･？｣
髪に触れていると、彼からぼんやりとした返事が返って来る
｢Aはさ、僕が恋人になるのは嫌？｣
｢･･･イヤ、かも、しれない｣
｢それは、僕がいなくなるかもしれないから？｣
彼は小さく頷いた。そして、こちらに身を寄せた。素肌同士で感じる温かさは、安心する事が出来る
｢僕はいなくならないよ、絶対に。約束する｣
｢･･･そう言って、皆いなくなった｣
揃いも揃って、掛ける言葉は同じか
同じような思考を持っていて、同じ言葉を掛けて、全員がAの前からいなくなった。そのせいでAは僕よりも酷く傷を負った
彼の性格も相まって、自責の念も強いはずだ
｢それでも、僕は、Aの恋人になりたいんだ。体だけの関係は、もう嫌なんだ。お願いだ。俺をお前の心の中に入れさせてくれ｣
身を寄せた彼を抱き締めながら懇願する
｢･･･れいくんは、本当に、僕を、一人にしない？｣
｢しない｣
お互いに崩れた一人称。僕はたまに一人称が崩れる時がある。それは、Aも同じだった。元々、彼の一人称が僕だった。しかし、萩原がいなくなって、松田と関係を結ぶ事になった時、彼は一人称を変えた
強く在ろうとしたんだと思う
それでも折れてしまった
曲げなければ折れてしまう、とはよく言ったものだ
｢ウソ、吐いたら、知らないからね｣
｢ああ、分かってる｣
｢それじゃあ･･･、これから、よろしくね･･･末、永く･･･｣
｢よろしくな｣
虚ろなAと生涯を共にすると誓った。彼は話し半分にしか聞いていないのか、すぐに眠ってしまったけれど
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作者名：空白可能
| 作成日時：2023年3月27日 23時
