可愛い担当の友人の話【男主】 (ページ36)

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後日談ページ36

｢れ、い･･･｣
｢貴方が僕にしてくれたように。Aさんが僕に生きたいと思える力を与えてくれたように｣

ずっと僕は死んでも良いと思っていた

親しい人も大切な人も誰もいなかった。いなくなったから、死んでも構わないと思っていた。この国の為に、誰かの為に命を落とせるのなら、本望だった

それこそ、赤井秀一がいたからこそ、憎しみの感情が生きる糧だった

Aさんがいたからこそ、穏やかな心を少しだけ持てていた

｢僕はAさんに生きていてほしい。生きる事は辛いと思います。それは十分に分かります。だからこそ、僕を傍に置いてください｣
｢俺は、零が傍にいてくれるなら、傍にいてほしい、れいが、傍に、だれかが、傍に･･･、｣
｢Aさん？｣

呼吸が浅くなり、言葉の呂律が回らなくなっている彼の名前を呼ぶ。こちらに向けられたAさんの目は焦点が合わなくなっていた

｢Aさん。一体、どうし、｣

どうしたのかと問い掛けようと思えば、Aさんは、ふっと意識が抜けたように目を閉じ、前のめりに倒れて来た。それを支えて、彼の事を見ると本当に意識を失っているようで、浅い呼吸ではなく、規則正しい呼吸をしていた

今日は、彼の話を聞く事は出来ないと判断し、担当の者に自分が付いておくので心配するなと言っておき、彼の家に戻った

彼の家には鍵が掛かっておらず、すんなりと入れて、Aさんをなんとか、寝室まで運ぶ事が出来た

｢ん、｣
｢Aさん？｣

ベッドに寝かせた彼の声が聞こえて、視線を向けて呼び掛けた

｢い、やだ、どこ･･･、だれか･･･｣

夢でうなされているのか、そんな寝言と共に目を閉じたままの彼の手は宙を彷徨っていた

｢ここにいますよ｣

ベッドの端に座り、宙を彷徨うAさんの手を握った

｢大丈夫ですからね｣

そう言いながら空いた手で、彼の頭を撫でてやるとうなされていた彼の表情が少し和らいだ

そこから、彼が起きるまでずっと傍にいて、手を握っていた。苦しそうな表情をすれば、頭を撫でてあげる

｢･･･ん、？｣
｢目が覚めましたか？｣

薄く目を開いたAさんに問い掛けた

｢れー･･･？｣
｢はい。僕です｣
｢手、握っててくれたんだ｣
｢勿論ですよ。起きますか？｣

頷いた彼の体を支えて、体を起こした

｢何か飲み物は？｣
｢･･･要らない。今は零と一緒にいたい｣

そう言って、彼は僕の事を抱き締めた

｢分かりました。一緒にいましょう｣

子供じみた彼の願いを聞き入れて、抱き締め返した