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｢フゥ･･･｣
｢気持ち良い？｣
｢ワウ｣
｢そっかそっか｣
Aという犬と何気ない日々を送っていた。何気ない日々、と言うよりは、温度差の激しい自分自身の日常に、一定の温度が加わって、急激に冷える事も、熱せられる事もなくなったと言ったら良いのかもしれない
そんな犬の一匹いる生活を送っていたのだが、困った事に犬がもう一匹、増えてしまった
｢･･･ウ、ゥウ･･･｣
｢な、仲良くね･･･｣
新参者の臭いを嗅いでいるAに、怯えている新参者の小さなポメラニアンの犬。名前はまだない。ポメラニアンの犬をかなり数を並べないと、Aの大きさに遠く及ばない為、怯えきっている
｢フン｣
｢アゥゥ･･･｣
鼻を鳴らされ、ポメラニアンはしょげてしまう
｢優しくな｣
仲良くなれるかは分からなかったけれど、ポメラニアンには名前がなくて、ハロと名付けた。新しい住人も増えて、よりいっそう、うちは賑やかになった
ハロはいたずらっ子で、Aがいつもそれを叱っていた。最初こそハラハラものだったが、あれはあれで良いコンビに見える。毎回、怒られているのにめげないハロも中々のものだ
Aも子どもに叱るぐらいのものなので、安心してハロの事を任せられる
二匹で固まって眠っている事もあって、帰って来た時に、それを見つけて、自然と笑みがこぼれたのを覚えている
ついつい、写真を撮ってしまった。それを携帯の待ち受け画面に設定したのは、僕だけの秘密だ
Aは僕が帰って来た事に気付いていたらしいけれど。僕が写真を撮った後に、しれっと体を起こしていた
｢今日もお留守番、よろしくね｣
｢ウゥ｣
いつものように頼むとAは首を横に振る
｢嫌なのか？｣
｢ワン｣
｢どうして？｣
｢ワン、ワウワン、ワウ｣
｢･･･ごめん、僕には分からないみたいだ｣
Aは何かを話してくれているが、犬語の分からない僕には理解が出来なかった
｢ワフゥ｣
呆れたような溜め息を吐かれた。Aはある意味、感情が旺盛な生き物と言えるだろう。人よりも人らしい犬だ
｢ワウゥゥ｣
｢分かった分かった、連れて行くから｣
ねだるように僕の体にもたれ掛かって来るAに言った
｢ハロはお留守番よろしくね｣
｢アンッ｣
Aがワガママを言うのも珍しいので、仕方なく連れて行く事に決めた。そもそも、Aは柔軟に対応する時が多いけれど、頑固な性格で、一度決めた事は曲げない質だ
それは、過ごしている過程でも、出会った時にもヒシヒシと感じていた
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作者名：空白可能
| 作成日時：2022年10月11日 23時
