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「じゃあ、ハロの事、お願いしますね」
「はい。大切に育てます」
沖矢 昴と約束をした日、ハロだけを引き渡した。勿論、ハロは嫌がっていたけれど、強く言い聞かせて、引き取ってもらった
「そちらの子は良いんですか?」
「はい。この子は僕がいないと、」
言葉の途中で、お尻を小突かれた。Aが僕の体を小突いたらしい
「・・・僕は彼がいないとダメなので」
「なるほど?」
「勿論、ハロもそうでしたが、彼は少し違うんです。では、そういう事で」
「分かりました」
ハロの事を預け、Aと共に帰った
「今日から二人ぼっちだね」
「アウ」
「・・・よろしくね」
「ワン!!」
二人きりになってしまった室内で、一番賑やかだったハロがいなくなってしまった。ハロが来る前の静かな部屋となった
少し寂しくなってしまった
それでも、僕は歩みを止められなかった
ハロと別れた理由がちゃんとあるのだから
FBIと公安が協力して、僕達が潜入していた組織の幹部を捕らえる事になっていた。いまだに潜入している僕が煽動して、こちらの組織を手引きして、幹部の確保までに至ったまでは良かった
しかし、そこからが問題だった
全員を見届けた後に僕が最後に、建物から撤退する手筈になっていたのだが、その途中、大きな爆発音が建物内に響き渡った
その結果、僕は崩れた建物の瓦礫に体を下敷きにされてしまった。体が下敷きになってしまっても、建物は崩れ続けて、いつの間にか気を失っていた
「ん・・・?」
それからどれだけが経ったか、僕は目を覚ました。顔に何か冷たい感触が何度も当たって、目を覚ます事が出来た
「うっ・・・、A、?」
薄く開いた目、ぼやけた視界で見えたのは蒼色だった。それだけで、Aだという推測が出来た為、彼の名前を呼んだ
「ワフ」
「どうして、こんな、所まで・・・」
Aは何も答えなかったけれど、鼻を僕の頭と地面の隙間に入れて、無理矢理に持ち上げた。固かった枕が暖かくてフワフワの枕に早変わりした
「A・・・、ありがとう」
暖かい枕に目蓋が落ちて来る。眠気には勝てず、気を失うように意識を手放した
「A、君だけでも、ここを出るんだ」
眠りから覚めた時、Aに言い聞かせるように言ったが、首を横に振られた
自分の体は相変わらず埋まっていて、抜け出す事が出来ずにいた。Aが引っ張ってくれたが、出られる気配は全くなかった
恐らく、これは僕を良く思わない人間の仕業だ。だとすれば、自分はこのままここで生き埋めになっていた方が良いと考えていた
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作者名:空白可能 | 作成日時:2022年10月11日 23時