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「ぁぐ・・・っ」


首筋とは言っても、Aの口は体に比例して大きく、喉までもを咬んでいた。払い退けようとしても、Aの力が人間の僕よりも強く、床に押さえ込まれた

食い千切られると思った。息をするの忘れるぐらいに、Aという犬を恐ろしく感じた。彼はいつでも僕を一方的に傷付ける事が出来た。それをしなかったのは、僕に不満を持っていなかったから

でも、今は違う


「いっ」


一度離された牙が、再び僕の首に咬み付いた

それは、先程よりも強くて、甘咬みの範囲ではなくて、牙が入り込んで行くのが、文字通り肌で感じられた


「う、は・・・っ」


首に刺さった牙が引き抜かれて、その抜かれた部分から、生暖かいものが流れているのが分かる

Aが僕の上から体を退かし、僕が体を起こす事が出来た


「バウバウ」
「・・・何言ってるか、分かんないよ」
「ハァゥ・・・」


溜め息にも似た声を出されて、弱くも笑みがこぼれてしまった。首に手の平を乗せる。それを離して見ると、赤色の液体がべっとりと付いていた


「フンッ」
「はいはい。僕が悪かったんだろう」


何が、かは分からなかったけれど、僕が何をするかはAに悟られてしまった気がする。隣の部屋から、ハロは怯えた様子でこちらを覗いていた

どうやら、ハロには伝わっていないらしい

となると、Aを沖矢 昴に預けるのは無理かもしれない、そう思った。察しも良ければ、人の言葉をほとんど完璧に理解している。そういう犬なのだ、Aというのは


「ったく」
「ウゥ・・・?」
「大丈夫だよ。分かってる」


まだやるのか?とでも言いたげに首を傾げたAの頭を撫でた。立ち上がって、傷口の治療をしようと思った


「うわ・・・、結構深いな・・・」
「フンッ」
「はいはい。ごめんって」


自分は悪くない、と言うようにAは鼻を鳴らした

普通ならありえない話だが、僕は犬よりも弱い。いや、犯罪者集団を一閃したあの一撃。凄まじい犬技を見せられたら、人間に勝てる気はしないが


「ふぅ」


消毒をして、大きな絆創膏を貼り、包帯を巻き付ける。まさか、犬に負けるとは思わなかった


「Aも歯磨きするぞ」
「ワフゥ」
「血が出るまで咬んだんだから、流石にな。こればかりは嫌がってもするぞ」


嫌な顔をしているAだが、暴れる事はせず、ちゃんと歯を磨かれていた。そんなAをハロが覗き込んでいたけれど、大きな尻尾で叩かれていた

仲の良い二人を見るのも、あと少し期間と思うと寂しい気分が募る

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作者名:空白可能 | 作成日時:2022年10月11日 23時

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