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「次に抜け出したら、本当に怒りますからね!!」
「すみません・・・」


病院に着いて病室に戻ったAくんは、医者の人に怒られていた。彼が素直に謝ると医者も溜め息を吐いたが、今回は見逃してくれた


「この僕が怒られるなんて・・・」
「当たり前です。無断で出て行ったんですから。それに輸血が必要な程に死にかけていたんです。今回は仕方ないですよ」
「冗談だよ。僕は怒られ慣れてるからね」


病室のベッドの上で、詰まらなそうに言った


「あ、そうだ。ハロは大丈夫だった?」
「元気ですよ。それにしても、一体何があったんですか?あんな、」


部屋で見付けた時のAくんの姿を思い出して、少しばかり気分が悪くなる

テーブルの上に置かれた赤く染まったカミソリと水の入った洗面器。血の気の失せた彼の顔。パッと見れば、彼が自ら命を絶とうとしたように思えてしまった

でも、部屋に入った瞬間に臭った異臭のお陰で、そうでは無いと思った。それにAくんは左利きにも関わらず、傷がついていたのは、左手首だったので、外部の人間だとしか思えなかった


「僕が来る前に何が・・・?」
「いきなりベランダのガラス戸が開いたと思ったら、何かを投げ込まれて、それから煙が出た。それ以降は知らない。目が覚めた時には病院だった」


その後は、僕の事を探して、一番手っ取り早い庁内に情報を聞きに来たそうだ。そうしたら、あの場面に遭遇したという事らしい


「それにしても、あのバカには要注意だ」
「バカって」
「バカで間違いは無い。今回は見逃したけど、僕に危害を加えた罪は重いと思うよ」
「危害を加えた・・・」


そう呟けば、Aくんは溜め息を吐いた


「アンタがした報告によれば、僕は自ら命を絶とうとしたように聞こえるが、あの男が護衛を失敗したと言った時点で、アイツが仕掛けたのは間違いないだろ」
「そう、ですけど・・・」


僕は確証が何も無かったので、上司にはAくんが部屋で手首を切って、意識不明の重体だという事しか言っていない。それに上司は、僕が報告する前に、彼が重体だという事を知っていた

つまり、彼の言う通りだという事だ


「当事者の人間には恨まれてるからね、僕は」
「・・・僕は恨んでませんよ」
「そうだったね。それに、上の連中も知っていて黙っているようだったし」


上の連中、と簡単にAくんは言うが、彼の言う連中は、警察のトップの事だ。そんな人達と知り合いであるAくんに、警察関係の人間は誰も逆らえない

とは言っても、彼の事を知っているのも、ごく一部の人間だけだが

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作者名:空白可能 | 作成日時:2020年3月1日 0時

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