Day04 ページ4
その舞台は、そう、言い表すなら今までで1番派手だった。
妖がどう、とか何とか、いずれにせよ登場人物が「人間ではない」らしいその舞台は、どうやら向井と目黒が主役らしい。
自分と「彼」の姿はない。そして時折生まれる不自然な間だったり変に空いている空間は、やっぱりそういう事なのだろう。
何が派手と言えば、突出しているのは「衣装」だろう。
特に目黒の背中に背負われている(？)羽は正直動き辛そうなのに舞台上の目黒はさも普段からそう生活しているように動いている。
他にも特殊メイクを施しているのだろう阿部の腕に描かれた瞳があまりにもリアルすぎて、思わず悲鳴をあげそうになった。
『俺、やだよ。今康二に触ったら何だか壊れてしまいそうなんだもん』
『えぇ？大丈夫やって、めめは心配性やなぁ』
さっきの舞台の向井とはガラリと変わって、少なくとも自分が知っている向井にとても近い人物が舞台からはけると、舞台に1人取り残された目黒は心情吐露のモノローグの様に語り出す。
『…それでも、俺は康二が間違った方に進んでも、黙ってる事しか出来ないよ』
その言葉に、昔自分たちが選んだ選択が間違っていたのではないかという――ずっと、思っていた事ではあったのだが――思念が想起される。
『俺ら全員、元々は無垢だったのにさ。…いつの間にか怪物になっててさ、』
「怪物」、という言葉は、散々自分たちが受けていた言葉だ。自分が1番嫌悪を抱いていた言葉。
『でもその全部を肯定しないと、前に進めないんだよね』
パッと舞台上を見る。舞台上の目黒の視線がこちらに向けられる事はない。
ぞわり、とした感覚がして、自分はその場から逃げるように立ち去った。
『自分の知らない、彼の「■■」の話を、信じたくなくても信じないといけないんだ』
そんな言葉も、聞こえないフリをして。
その全てを肯定する。
それはつまり、自分が最期にした選択も、そもそも1番最初、あの日の選択すらも、肯定しないといけない、という事で。
別段、否定したいという訳ではない。わからないのだ。
…「彼」は、幸せだったのだろうか。
聞かないといけない事は山ほどある。
あんな早くに、自分の所為とはいえ、自分の選択の所為とはいえ、離れてしまったのだ。
「舞台」はまだ続く。スチームパンク的な雰囲気を醸し出すその舞台を通り過ぎようとした刹那、
『ねぇ照、いい加減俺の事ふっかって呼んで！』
なんて、散々聞いてきた、聞き覚えしかない声が自分の耳に入ってきた。
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ゆづ - やばいです…。思い出してこれだけでも泣きました (2020年8月28日 22時) (
レス) id: deb2d46d42 (このIDを非表示/違反報告)
湊都(プロフ) - そら。さん» ご指摘ありがとうございます！ (2020年8月26日 7時) (レス) id: 9124562c1c (このIDを非表示/違反報告)
そら。 - Day 5のところなんですが、和風の世界の主役は『目黒と向井』ではないのでしょうか…？間違っていたら申し訳ありません (2020年8月26日 6時) (レス) id: c6c4969a03 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：湊都 | 作成日時：2020年8月22日 14時
