白衣 /伊沢 水上 ページ17
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「Aちゃん医学部っぽーい」
「いえーい」
現在、Aちゃんに着せちゃってるのは俺が動画内で使用した白衣である。
男物なのでそりゃボタンの位置が違うと初めは嘆いていたが今はノリノリだ。
俺は片手にカメラを構えている。ロック画面にさせてくれ。
「伊沢さん」
「そんな顔で見るなよ水上」
後ろから刺さる水上の視線が痛い。今鶴崎とか光ちゃんいなくてよかった気がする。
いや、水上だけっていうのも。しかも医学部の水上だけど。俺生きて帰れるかな。
「水上さんも白衣着よう?」
「うわー、持ってる」
「本番で使うようなのじゃなくて番組で使うものでしょ?」
「これから撮影だから」
「お忙しい水上さん、どうかツーショットを」
「ツーショット!?」
「伊沢さんうるさい」
Aちゃんに制止される僕です。うわーん、Aのチェキは5億の価値あるよ。
水上の30秒ペイントより価値あるよ。問題の質は良かったけどね。
でもお父さん認めません。娘の門出の日を迎えさせたくありません。
「着ちゃった」
「ああああ」
「伊沢さん、Aさんのためだと思って撮ってください」
「じゃないと自撮りします」
「余計カップル感増すじゃん!」
お父さん仕方ないので撮りますよ! はい、ぱしゃり!
途端にAちゃんは「SNSのアイコンにしたい」って言ったのでそれは許さなかった。
ちなみに今は俺とのツーショットです。阻止をした。
「伊沢さん怖いねー」
「Aさんの前だとこんなじゃない?」
「水上さんがきてるからテンション上がってるとか?」
「過保護なだけ」
「いいよAちゃんになら過保護でー」
甘いんだろうなあ。最近川上に「Aさんに甘すぎません?」って怒られたばかりでした。
すでにロック画面に映る白衣姿のAちゃんが満面の笑みを浮かべる写真。
かわいいじゃん。めちゃくちゃいいじゃん?
「ね、俺の白衣着てみて」
「えっ、水上さんの?」
「いいよね。伊沢さん」
「なぜ俺に許可を……」
ファンの顔になってるAちゃんを差し置いて俺に許可を求めた水上。
聞いたのも杞憂でおそらく宣戦布告されたんだと思う。
仕方ない、受けてたってやるよ。Aちゃんは渡しません!
「伊沢さんのじゃないよ」
「俺の方が仲良い」
「意地っ張りで子供っぽいなー」
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