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「Aさん、連れてきたわよ」
「ゴホッ、ありがとうございます」
咳き込む羽生さんは額にガーゼをつけていて、顔には無数の擦り傷があった。病衣の隙間から見える肌には包帯が巻かれていて、その怪我の多さに私は思わず立ち止まる。
「ははっ、Aびっくりしたろ。こんな、姿になってて」
「……びっくり、してる」
「連絡、してやれなくて悪かった」
思ったよりも狭い個室のそこでは、ベッド脇に近寄らなくたって羽生さんとの距離はほど近い。それでも羽生さんは、私のことを呼ぶようにベッドを叩いた。
「私は少し出てるから、2人で話しなさい」
「山守さん、ありがとうございます…」
山守さんは私を勇気づけるように、背中をぽんと叩いて、それから病室から出て行った。
促されるままに私はベッド脇の椅子に座る。
「前とは逆だな。Aが入院してた時」
「…うん」
「ここんとこ、どうだった？許嫁とは、大丈夫だったか？」
「…そんなこと、いいんだよ。羽生さん、声は大丈夫？」
「ああ、熱傷で、喉がちょっとな」
だからしゃがれた声になっていて、咳き込んでいるのか。私は背中を丸めて咳き込む羽生さんの背に手を伸ばす。傷が痛まないように、優しく摩る。それこそ行為の時以外で羽生さんに触れることは、今までにもそうなかったかもしれない。
「…ん、ありがとう」
「山守さんから、聞いた。藤田さんのこと」
私が触れていた背中が、その名前に反応するようにぴくりと動いた。
「だから泣いたんだな」
「わかった？」
「Aの顔見たらすぐに」
羽生さんには隠すことが出来ないということだ。あっさりと見抜かれて、羽生さんが生きていることを実感して、それでもこの世界に藤田さんはいない。そんなことがごちゃ混ぜになって、関係のない私がまた泣いてしまいそうだった。
「我慢しなくてもいいんだぞ」
「っ」
「Aは、もっと自分の心に素直になるべきだ。な？」
羽生さんの包帯にまみれた手が、私の頬をなぞった。鼻につくような独特の消毒液の匂いは、普段の羽生さんからはしない匂いだ。その匂いがきっかけで、私の目からは涙がこぼれる。
「散々、私は生きるのどうでもいいとか、思ってたけど……羽生さんが…生きてて、私は、よかった」
きっとこれは、羽生さんだから思う気持ち。
泣きながらそれを伝えると、羽生さんの頬にも同じように滴が伝う。
羽生さんが生きていてくれて、良かった。
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ハニ(プロフ) - 更新楽しみにしてます!! (2022年8月30日 17時) (
レス) id: e49c92eedc (このIDを非表示/違反報告)
kotono3026(プロフ) - 面白くて続きがすごく読みたいです！ (2022年7月11日 7時) (レス) @page18 id: 7aa8e8b85c (このIDを非表示/違反報告)
なずな - 続きを楽しみにしています！！ (2022年5月3日 6時) (レス) @page18 id: 3993a699bc (このIDを非表示/違反報告)
A(プロフ) - 続きを楽しみにしてます！ (2022年4月30日 19時) (レス) @page18 id: c5820b78bf (このIDを非表示/違反報告)
まい - こんばんは。ちょくちょくこの小説を読みに来ているのですが更新がされていないようで寂しいです…。続きはあると思ってもよろしいでしょうか？ (2022年2月15日 5時) (レス) @page18 id: 8f49d2e699 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：みずたま | 作成日時：2021年11月25日 19時
