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私の涙が落ち着いたころ、羽生さんは自分の頬に残る濡れた跡を指で拭って、ぽつりと呟いた。
「…今回の事件、実は少し気になることがある」
「今回の、って…羽生さんが怪我したそれのこと？」
「ああ。山守さんも、今それを調べてくれてる。俺も、復帰次第調べる」
薄っぺらい布団の上に置かれた羽生さんが、手をぎゅうと握り込んだ。鋭い目には、光が見える。
無理しないで、というのは言うのは簡単だ。けれど、それを今の羽生さんに言うのはきっと違う。
「……何か必要なことがあったら、支援するから言ってね」
「支援、って…」
「主に現金になるけど」
「ちょっと待てA」
羽生さんの手が伸びてきて、私の手を掴んだ。その掴んでいる力は強くない。私を止めることだって、出来ない。
「Aは自分の家が好きじゃないだろ？」
「私が家のことは嫌いでも、お金がお金であることには変わりないでしょ。大丈夫、私が自由に使える範囲だけの話だから」
それで羽生さんの力になれるなら、尚のこといい。
「羽生さんにはたくさんお世話になって、感謝してる。私のことも上手く利用してほしい」
羽生さんのために役に立ちたいという気持ちは、私はこんな形じゃないと表すことが出来ない。私はそうやって、誰かに利用されるために生きてきたからだ。
でも、好き勝手に利用されるのと、自分から進んで申し出るのとは全然違う。
「……言い方ってもんがあるだろ」
「使えるものは、使わなきゃ。私も、羽生さんも」
羽生さんは私の言葉に躊躇いを見せていた。
それでも大きくため息をついて、私の頭の上に手を置いた。ぽんぽんと撫でられる。
「…わかった、何かあれば言う」
「うん。事件のこと、わかればいいね」
「ああ」
退院したから会いたいと連絡がやってきたのが、それから2週間後。
いつものラウンジへやって来ると、どこか憔悴した様子の羽生さんがソファーに座り込んでいた。
「羽生さん？具合悪いの？」
その顔を覗き込むように私が近寄ると、ぐいと手首が掴まれた。こっちが驚くぐらいの力強さだった。
至近距離で見たその表情はどこか疲れているのに、目だけはギラギラと光っている。
「…Aに頼みたいことがある」
「うん」
「何も言わずに、頼まれてくれるか？」
その目に宿っている感情が、一体なんなのかわからない。それでも私は、考える間もなく頷いた。
「私に出来ることならなんでも」
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ハニ(プロフ) - 更新楽しみにしてます!! (2022年8月30日 17時) (
レス) id: e49c92eedc (このIDを非表示/違反報告)
kotono3026(プロフ) - 面白くて続きがすごく読みたいです！ (2022年7月11日 7時) (レス) @page18 id: 7aa8e8b85c (このIDを非表示/違反報告)
なずな - 続きを楽しみにしています！！ (2022年5月3日 6時) (レス) @page18 id: 3993a699bc (このIDを非表示/違反報告)
A(プロフ) - 続きを楽しみにしてます！ (2022年4月30日 19時) (レス) @page18 id: c5820b78bf (このIDを非表示/違反報告)
まい - こんばんは。ちょくちょくこの小説を読みに来ているのですが更新がされていないようで寂しいです…。続きはあると思ってもよろしいでしょうか？ (2022年2月15日 5時) (レス) @page18 id: 8f49d2e699 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：みずたま | 作成日時：2021年11月25日 19時
