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山守さんに呼び出されたのは警察病院で、私はそれだけに覚悟を決めなければいけなかった。車で向かう道中で、私に笑いかける羽生さんの顔が浮かんでは消えていく。祈るように組んだ両手の指先は力を込めすぎて真っ白になっていた。
病院の裏口で待っていた山守さんと合流すると、足早に病院内を歩いていく。
「Aさん、急にごめんなさいね」
「わざわざご連絡ありがとうございます。羽生さん…のこと、ですよね」
勝手に震える声を止めることは出来なかった。最悪は何度も想定した。大丈夫と思っていても、私は羽生さんを失うことをやっぱり恐れているらしかった。
エレベーターに乗って2人きりになると、山守さんは私と向かい合った。私の手に、そっと山守さんの手が重なる。
「大丈夫。彼は生きてる」
「っ、そうですか…！よかった…」
思わず足の力が抜けそうになった。散々あった緊張感が抜けて、心が弛む。
エレベーターの壁にもたれかかるようにすると、山守さんの手が私のことを支えてくれた。
山守さんの手は、なぜか震えていた。
「羽生くんは今も、面会謝絶なの。容態はかなり落ち着いたけど、関わった事件が事件だったから。羽生くんからもなんの連絡はなかったでしょ？」
「…はい」
「許してあげて。仕事上、それは仕方がないことなの。でも、私がAさんの立場ならきっと知りたいと思うはずだから。本人にもあなたを連れてくることは言っておいたわ」
「…あ、ありがとう、ございます…」
山守さんは私のことを羽生さんの彼女だと思っているからこその行動に出てくれたんだけれど、実際には違う。
それでも山守さんの優しさに感謝した。私だけの力じゃ知ったところで会いにくることは出来なかったはずだ。
「っ、あの。ひどい事件だったんですか…？羽生さんがそんなになるなんて。藤田さんは大丈夫でしたか…？」
「藤田は……死んだの」
「えっ」
目的の階に着いたエレベーターが、チンと音を鳴らす。開いた扉の向こうの明かりが、山守さんの頬を照らす。そこには濡れた形跡があって、私ははっと目を見開いた。
「生き残ったのは羽生くんだけだった。……Aさんが、私と同じ気持ちにならなくて、本当によかった」
今度こそ足の力が抜けて、私はその場で蹲る。
会った回数は1度。それでも藤田さんという人がどれだけ素敵な人なのか、羽生さんがどれだけ慕っているのか、山守さんとどれだけお似合いだったか、そんなことは痛いぐらいにわかっていた。
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ハニ(プロフ) - 更新楽しみにしてます!! (2022年8月30日 17時) (
レス) id: e49c92eedc (このIDを非表示/違反報告)
kotono3026(プロフ) - 面白くて続きがすごく読みたいです！ (2022年7月11日 7時) (レス) @page18 id: 7aa8e8b85c (このIDを非表示/違反報告)
なずな - 続きを楽しみにしています！！ (2022年5月3日 6時) (レス) @page18 id: 3993a699bc (このIDを非表示/違反報告)
A(プロフ) - 続きを楽しみにしてます！ (2022年4月30日 19時) (レス) @page18 id: c5820b78bf (このIDを非表示/違反報告)
まい - こんばんは。ちょくちょくこの小説を読みに来ているのですが更新がされていないようで寂しいです…。続きはあると思ってもよろしいでしょうか？ (2022年2月15日 5時) (レス) @page18 id: 8f49d2e699 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：みずたま | 作成日時：2021年11月25日 19時
