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そんなことを考えているうちに、あたしはもうセットの中央に到着していて。
目の前のADと、アイコンタクトをとる。
ああ…曲が始まってしまう。
これだけ長い時を経て用意した曲なのに、まだ心の準備が出来ていないなんて。
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…いや、違う。
所詮テレビ用の無情なトークではあったが、確かに交わした先ほどの広臣との会話でも、ブレなかった固い心が。
たった一瞬、感じた彼の匂いだけで、揺らいでしまったんだ。
こんな生半可な思いじゃ歌えないように、仕上げた大事な曲なのに。
そうこうしているうちに、聞きなれたイントロがスタジオに流れ出す。
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あぁ、もう…仕方ない。
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目を閉じて。
必死に、体中の神経を研ぎ澄ます。
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まぶた越しに感じるスポットライトの光と、背中に浴びるたくさんの視線と気配。
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その中に、広臣の視線もあるのかと思うと胸が震える。
それが何故かはわからないが、その高鳴りを抑えようと胸に手を当てる。
徐々にシャットアウトされつつある外界に別れを告げ、ゆっくりと自分だけの世界に浸ると、
封印していたはずの広臣との思い出が、ドっと頭の中を駆け巡り出す。
それが吉と出るかはわからないが、今だけはその思い出たちに身を委ねることを許し、
大きく息を吸うと同時にマイクを握りしめる右手を、ゆっくりと口元へも引き上げた。
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尼崎の雑草になりたい(プロフ) - イッキ読みしました!笑中2ころから書かれてたなんて、すごいです!臣くんと隆二くんの特徴とか健ちゃんの感じも汲み取っててとても素晴らしい小説でした! (2019年3月23日 1時) (レス) id: 9e0d1bf52d (このIDを非表示/違反報告)
ひとみ(プロフ) - 昨日の夜から読み始め今読み終わりました…もう最高っ!何度泣いてしまったか…すごく苦しい場面もありましたがすごく素敵なお話ありがとうございました!! (2017年9月2日 17時) (レス) id: 73f9f33188 (このIDを非表示/違反報告)
ちくしょー青春。(プロフ) - miiさん» ありがとうございました!!一応書き手としている身としては、この上なく嬉しいお言葉…!!(T ^ T)またお会いできる機会がありましたら、よろしくお願いします! (2016年12月28日 21時) (レス) id: 37b819d85e (このIDを非表示/違反報告)
ちくしょー青春。(プロフ) - さくらさん» 返信がすごく遅くなってしまいました……ありがとうございました!!それどけの感動を与えられたのなら、もう満足です。有難い限りです。ご愛読本当にありがとうございました!! (2016年12月28日 21時) (レス) id: 37b819d85e (このIDを非表示/違反報告)
mii - 凄くやばかったです!もう読んでて満足とゆーか、楽しかったです! (2016年10月19日 19時) (レス) id: 38aaae60ac (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ちくしょー青春。 | 作成日時:2015年12月29日 0時