助け。 ページ31
硝子ちゃんが、いる。
きゅっと抱きしめられた感触がしたと思えば、ふわりと体の痛みが半減した。
「おい、聞いてんだよ。」
「ヒィ、な、な、なんでもない!!なんでも…」
「だから、誰が、誰に、誰を売るって?」
「ち、ちが、そんなこと言ってな」
「うるせーよ。」
「いや理不尽」
「あ?なんだよ傑、文句あんのかよ。」
「いや?ないよ?」
「ど、どうか、た、た、たすけ」
さっきまで威勢よく話していた男達の声が、ぶるぶると震えている。
「黙れ。」
次の瞬間、凄まじい音がして、屋根が吹き飛んでいった。
硝子ちゃんに体を抱きしめられていて、よく見えなかったけれど、屋根と壁の一部があっけなく消え去っていくのははっきりと見えた。
光を遮るものがなくなったせいか、月明かりで全てが照らされていた。
「や、ね…」
「ん?ああ、Aは気にしなくていいんだよ。大丈夫、あいつらに任せておきな。」
あいつら?あいつらって…
「ぐはぁっ…!!!」
「悟、車はもう呼んだからね。」
「おいハゲ、へばってんなよ。」
悟さんと傑さんらしき人影が見える。
悟さんも、傑さんも、来てくれたのね…
もう安心だという気持ちのおかげで、やっと恐怖で凍りついていた心がゆるりと解けた。
「Aが感じた痛みには程遠いんだよ。あと百発、いや千発殴らせろ。」
「はあ…悟、やり過ぎるなよ。」
悟さんが何かを足蹴りしたのが見えた。
また、壁が吹き飛んだ。
「クソ野郎ども、起き上がれ。」
「ぁ…ぐっ…!!」
その後も、悟さんが足蹴りをするたびに壁が消え失せていった。
「悟、そろそろやめな。やり過ぎだ。」
「うるせー。Aが受けた痛みに比べりゃやり過ぎもクソもあるかよ」
「悟。」
なおも鳴り響く轟音に、不安になってきた。
あの男達のために、悟さんの手を汚したくはない。
それが私の術式や血の為であろうとも、私のせいで悟さんの手を汚くはさせたくなかった。
悟さん、それ以上したら、あの人達は死んでしまうわ。あなたの手を、汚してほしくないの。
「さと、るさ、ん」
声も満足に出ず、体も動かないけれど、硝子ちゃんに抱きしめられながら、必死で腕を伸ばす。
悟さんの顔を無性に見たくなった。
腕を伸ばすけれど、悟さんに気づいてもらえない。
それでも、必死で悟さんの名前を呼び、腕を伸ばし続けた。
「……A…?」
ああ、やっと、気づいてもらえた。
「さとる、さん」
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桜 - まさか…… (2022年8月1日 23時) (レス) @page33 id: eaa9446555 (このIDを非表示/違反報告)
雪(プロフ) - 甘味!さん» 甘味!さん、いつもコメントありがとうございます。実はですね、あの人夏油さんじゃないんですよ…一個下の黒髪のあの人です。ななみんと同期の…更新頑張りますので、これからもよろしくお願いします! (2021年7月8日 19時) (レス) id: f9d6daf8b8 (このIDを非表示/違反報告)
雪(プロフ) - プスメラウィッチさん» ごじょるオチです。ごじょるにしかおちません。 (2021年7月8日 1時) (レス) id: f9d6daf8b8 (このIDを非表示/違反報告)
甘味! - はい!夏油さんだと思いたいですっ(更新楽しみにしてます! (2021年7月7日 20時) (レス) id: f8e0e8f1cf (このIDを非表示/違反報告)
プスメラウィッチ - 初めまして、この小説は五条悟オチですか?できれば五条悟オチでお願い出来ますか?続き頑張って下さい。応援してます。 (2021年7月1日 4時) (レス) id: 8685377221 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:雪 | 作成日時:2021年6月20日 0時