第93話 ページ46
銀髪の人は振り向かずに、何かを悟った表情で口を開いた。
「やあ、相澤くん。今日の空も素晴らしく綺麗だね」
「反野。お前の教えは酷く汚いな」
「んな事言わないでよ〜」
そしてそう言いながら銀髪の人は振り向く。
銀髪の人の後ろにたっていた人。
それは全身真っ黒で同い年くらいの年齢の男の人だった。
「職場体験で福岡来たくらいで浮かれんな。
お前から目を離した俺が馬鹿だった。
あと…赤い羽のお前。
こいつの教えは忘れた方が人間的には損しないぞ」
「えっ、それ酷くないかショータクン」
「つか職員室、校長室の常連兼梅雨時期ほぼ毎日連行経験者が何言っても説得力はない」
「ここでバラすなぁぁぁ!!!」
「はよ動け」
女の人は"相澤"と呼ばれた人に引きずられながらこっちを向いた。
「ねぇ!」
「なーに」
「赤い羽根くんの個性めっちゃいいね!!
自由に使っちまええ!!」
「自由すぎてもアウトだろうが…」
「あの子は限度知ってる子だからだいじょーぶだいじょーぶ」
嵐のように来て嵐のように去っていった銀髪の人の後ろ姿を見つめながら俺は呟く。
「…やっぱしあん人は問題児ばい」
そして子供ながらに俺は、あの時銀髪の人を引きずって行った"相澤"という人に嫉妬心を覚えたのだった。
＿＿あれ…この糸…
俺は落ちている銀色の糸のようなものを見つける。
「ばり綺麗…」
なんとなく拾い、俺はポケットに突っ込んだのだった。
それから約1年後、"反野"と呼ばれていたあの人は有名になる。
インターン中の事故死をした少女として。
·
俺はポケットからポーチを取りだし、絆創膏と共に入っている"銀色の糸のようなもの"を取り出した。
今思えばこれはあの人の…反野鏡華の髪の毛だったのだろう。
でも、これがあれば。これさえあれば検査にかけられる。
反野鏡華と姿見A。
この2人は似ている。いや、似ているどころではない。
あの時、反野鏡華にいだいた感情が"憧れ"を越えたのならば。
反野鏡華に似たどころではない姿見Aにいだく物は必然的なものだ。
きっとそれは、"相澤消太"も同じで＿＿。
「ホークス、なんか挑戦的な目ばしとりますね…」
「そう?まあ、ちょっとした争奪合戦が始まるかもっていうね。やだやだ」
そう言ってサイドキックに怖がられたのは言うまでもない。
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作者名：ある x他1人 | 作成日時：2020年2月27日 21時
