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不安にならないように (かわかみ) ページ6

現象は、ほんの数十秒の間に起こった。時間に換算すれば、一瞬の事だけれど、わたしの目には何故かスローモーションに映って。それ以降の事はよく覚えていない。とりあえず覚えている事は、洋平がファンの子に自分の飲みかけのペットボトルを飲ませて、またそれを洋平が飲んで。他にも、色々セクハラ的な事はしていたようだけれど、わたしはよく覚えていない。というか、覚えたくない。
洋平が気分が盛り上がってそういう事をしたり、アクシデントか何かでそうなってしまった、というのは耳にした事はあったけれど、自分が招待されてしかもわざわざ岡山まで出向いたところで実際に目撃してしまったのは、わたしの運のツキというか。
はあ、わたしは思い上がってたんだろうなあ。だからわたしは予測してなかった事が起きてこんなに心がやさぐれているんだ。

コンコンと、数回ドアをノックしてから開けると鏡越しに座って喉を加湿させている洋平と目が合った。声を出す代わりに右手をヒラヒラと振って出迎えてくれた。
いくら恋人といえども楽屋に来る事なんて滅多に無いから、少し緊張して座る場所に困ってしまう。

「こっち来なよ」

洋平は、まるで空気を吐き出しているだけかのような微かな声で隣の椅子を指差した。

「失礼します…」

「何で敬語なわけ?」

「え?なんか、なんとなく」

「ふーん」

会話が途切れてしまった。普段なら気にならない沈黙も、何故か今日は変に気になってしまって、次の話題をと頭の中を探る。本当に言いたい事は決まっているのに、頭がそれを言わせない。

「今日、凄い盛り上がってたね。twitterとかでも、話題になってた」

「え、何かしたっけ俺」

「ぺ、ぺっとぼとる…」

「ペットボトル?」

「飲みかけのやつ」

「あー!あれか!あれね」

気分盛り上がっちゃうとやっちゃうんだよねえ、終わった後あんま覚えてないんだけど、と洋平は表情を崩さずに言った。

「わたし、初めて見たからびっくりしちゃったよ」

「そっか、ごめんごめん」

「…わたし勘違いしてたのかもって思った」

鏡越しに洋平がチラとわたしの目を見る。

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もふこ(プロフ) - ぼんさん» めっちゃきゅんきゅんしました…!主人公には幸せになって欲しいですね!ありがとうございました!! (2017年4月12日 19時) (レス) id: dd474415f5 (このIDを非表示/違反報告)
もふこ(プロフ) - ぼんさん» 磯部さんならなんでも!よろしくお願いします! (2017年3月11日 10時) (レス) id: eb30167fe1 (このIDを非表示/違反報告)
ぼん(プロフ) - もふこさん» リクエストありがとうございます!ご希望などはありますか?? (2017年3月9日 17時) (レス) id: 049e7dd19b (このIDを非表示/違反報告)
もふこ(プロフ) - 続けてで申し訳ないんですが私も磯部さんお願いします!! (2017年3月9日 15時) (レス) id: eb30167fe1 (このIDを非表示/違反報告)
浅葱(プロフ) - ぼんさん» ありがとう(*´>ω<`)楽しみにしとります! (2017年2月22日 8時) (レス) id: 88fd766a80 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ぼん | 作成日時:2017年2月1日 3時

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