ミモザ (いそべ) ※request ページ14
彼に本命の人がいる事は分かっていたし、それでもいいと思って気持ちはずっと胸に秘めていた。
ライブスタッフの一人である私は、彼に名前を覚えてもらっているのかすら自信が無かったし、遠くから彼の仕事に向き合う姿を見つめられれば、それで良かった。
好きになったきっかけなんて覚えてないけれど、メンバーさんやスタッフと雑談している時の柔らかい表情とか、人が話している時はきちんと相手の目を見てるところとか、ありがとうをちゃんと言えるところ、何よりいつも「音楽」の事を考えて、創意工夫を怠らないところ。数え上げたらきりがないけど、彼の好きな瞬間は日毎に増していくばかり。
「今日ヒロの彼女さん来るの？」
川上さんが何気なく尋ねた質問が楽屋から聞こえてきて、丁度その前を通り過ぎようとした私の耳に入ってくる。彼女、という単語が私の鼓膜を震わせる。
「んー、多分くるかな」
ヒロさんの恋人は、私よりずっとスタイルが良くて、美人で、知的で、家庭的で、いつも綺麗な格好をしていて、美味しい差し入れを持って来てくれる。前に一度だけ、その差し入れを恋人さんから直接受け取った事がある。その時にはもう私はヒロさんに恋をしていて、高そうな紙袋を差し出してくれた目の前の人が、「恋のライバル」なのかとぼんやり思った。私なんて足元にも及ばないし、ライバルなんて器でもないんだけれど、ライバルなんて思わないとヒロさんへの思いが決して叶わない夢なのだと実感させられてしまいそうで。
ヒロさんの言葉通り、アンコール直前に恋人さんが会場に着いた。彼女はそうだ、開演前から会場に着いていた事なんて無い。いつも終演直前にやって来る。高そうな紙袋を提げて、高いヒールを履いて、長い髪を綺麗に巻いて。
「あの、良かったらこれスタッフさんみんなで」
不意に声をかけられて振り向くと、ヒロさんの恋人さんがいて。差し出された紙袋を受け取って「ありがとうございます」と言うと、一瞬微笑んですぐに喫煙所の方へ向かった。紙袋を手にしたままその後ろ姿をぼーっと見ていると、先輩スタッフが一連の動きを見ていたらしく、「ヒロさんのあの人って、綺麗だけど何か怖いよね」と耳打ちしてきた。
「確かに」
「ま、超絶美人だからこんな事とてもじゃないけど言えないけどね〜。あ、今日は何持ってきてくれたの？うわ！これめっちゃ美味しいやつ！持ってくね〜」
先輩に紙袋を奪い取られても尚、私は姿の見えなくなった恋人さんを見つめ続けた。
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もふこ(プロフ) - ぼんさん» めっちゃきゅんきゅんしました…！主人公には幸せになって欲しいですね！ありがとうございました！！ (2017年4月12日 19時) (
レス) id: dd474415f5 (このIDを非表示/違反報告)
もふこ(プロフ) - ぼんさん» 磯部さんならなんでも！よろしくお願いします！ (2017年3月11日 10時) (レス) id: eb30167fe1 (このIDを非表示/違反報告)
ぼん(プロフ) - もふこさん» リクエストありがとうございます！ご希望などはありますか？？ (2017年3月9日 17時) (レス) id: 049e7dd19b (このIDを非表示/違反報告)
もふこ(プロフ) - 続けてで申し訳ないんですが私も磯部さんお願いします!! (2017年3月9日 15時) (レス) id: eb30167fe1 (このIDを非表示/違反報告)
浅葱(プロフ) - ぼんさん» ありがとう(*´>ω<`)楽しみにしとります！ (2017年2月22日 8時) (レス) id: 88fd766a80 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ぼん | 作成日時：2017年2月1日 3時
