〈続〉９６話 大事な人 [相葉] ページ24
小豆色の屋根が続く
平家の家家をぼんやり眺め、
通るバイクの音に耳を澄ませた。
その家は、昔と変わらずに
頬杖ついた肘の下、古い窓枠が軋む。
過ごしやすい季節の気持ちの良い風が
庭先に小さな命を呼んだ。
飼い主不在の猫の家は
引き取り手もいなく、片付けも入らず
今年も空き家のまま。
「ねえ翔ちゃん、」
「翔ちゃんに知らせなきゃなんない事があるんだ」
猫が幸せそうに伸びをする庭へ、呟いた。
俺はまだ、
諦めがついてないみたいだ。
・・「ごめんくださぁ〜い」
ふいに響いた扉を叩く音に
庭先の猫と目が合って
数秒して、猫が走って行った先、
俺の顔を見た死神が、珍しく、
毒のない、あどけない顔で
ニノ「なんだ。思ったより落ち込んでないじゃん」
なんて笑った。
あれから6年。
何となく、お互いに距離を取っていた。
集まると、一人足りないことに気づいちゃうから。
だから、
お互いバラバラに時間を過ごして
痛みに触れないように、って。
ニノ「この家相変わらず汚えな。」
玄関へ回って、埃をまとった柱に指を滑らせ、
ニノが当たり前のように俺を前にして話す。
「普通さ、久しぶり、とか。そんなんなんだからね。久しぶりに会った人たちの会話って」
ニノ「あなたに普通の人の話を説かれる日がくるとは思わなかったなあ(笑)」
「うるさい。取り敢えず…上がりなよ」
昼間でも少し薄暗い玄関。
パチン、と蛍光灯を灯すと
鉄色のバケツが鈍く光りを反射して
その中に、いつかの思い出が焦げ付いて
記憶のせい、鼻の奥で火薬の匂いがツンとした。
ニノは、同じものを見ても
見えなかったフリをするのか
上手にまた笑って
ニノ「久しぶり、相葉さん。少し痩せた？」
「痩せ…たかなあ？それより何よりさ、元気そうで、何より。」
ニノ「何より、しか言ってねえじゃん」
ちゃかされて
ぎこちなく笑った俺をすり抜けて
ニノは懐かしい居間に踏み入った。
ニノ「他のみんなも元気かな。」
「さあ、どうかな」
ニノ「誰とも会ってないの？」
「うん。ニノが最初」
ニノ「へえ。」
「てか急にどしたの？」
ソファーの沈み加減を手で確かめたニノ。
ニノ「そろそろいいんじゃない？って思って」
ニノ「いや、だって、6年だよ？」
ニノ「分かっててココ来たんじゃないの？」
「俺は…」
あの子を、見送りに来たんだ。
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あかり - ぜひ見させていただきます！！ (2015年8月9日 21時) (
レス) id: 1ac7fc90e9 (このIDを非表示/違反報告)
ふみちゃん(プロフ) - あかりさん» そう言っていただけると本当に嬉しいです！よければ他の作品もよろしくお願いします。 (2015年8月9日 20時) (レス) id: f36ed0f5f4 (このIDを非表示/違反報告)
あかり - とてもおもしろかったです！完結おめでとうございます((o(*>ω<*)o)) (2015年8月5日 21時) (レス) id: 1ac7fc90e9 (このIDを非表示/違反報告)
ふみちゃん(プロフ) - 花夜さん» 花夜さん、ありがとうございます。今後の励みになります♪ (2015年7月30日 22時) (レス) id: f36ed0f5f4 (このIDを非表示/違反報告)
花夜 - 凄く面白いです!!! (2015年7月27日 15時) (レス) id: 7e159a367e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ふみちゃん | 作成日時：2015年5月20日 17時
