【ノルソル過去編】善良な悪人達の話 ページ37
子供が傷だらけの手で懐から取り出したのは、血塗れの封書だった。
王に読んでほしいと懇願する子供に、王は深く頷いた後で封書を受け取る。
その封書は、血で汚れ。グシャグシャになっていたものの辛うじて読むことが出来た。
覚えたてであろう歪な地球の文字で綴られるその事実に、王は目を見開く。
そしてそれを大事に自身の懐へとしまい込むと、駐屯基地の隊員に子供たちの看護。そして、移民街への居住を許可する旨を伝えた。
「父上!」
駐屯基地を後にした王を呼び止めたのはヤマだった。
それもそのはず、王に無闇な移民の受け入れは危険だと……先程言ったばかり。
しかも、今回は素性の知れない正体不明者を受け入れるつもりの王に納得がいかなかったからだ。
「何故です!私は反対だ!今すぐ彼らの身の上を調べあげ故郷に送還すべきでは!?」
「……ヤマ。あの子らは事故で不時着した漂流者などではない」
「!?……では」
「……月都の民。しかも亡命者だ」
「亡命、者?」
目を見開いたヤマに、王は先程の封書を手渡した。
そこに綴られていたのは、王への挨拶から始まり……月都の真実、妖兎族としての最後の望み、そして命の保護を嘆願する文章。
これを書くために覚えたのであろう地球の文字は所々誤りがあり、しかしそれでも一生懸命に綴られている。
必死さが伝わるその封書を読み終えた後で、ヤマは王に視線を向けた。
「ここに記された月都の現状が真実かどうかはワシにも分からん。だが、しかし。今後の移民受け入れに関しての件とともに……ツクヨミ殿とはもう一度会談せねばならんな……。ヤマ。先程のお前の意見も含め今後を考えようではないか」
「父上……」
王はそれ以上を語らず、送迎用の牛車に乗込んだ。ヤマも無言でそれに続いたのだった。
「何をしておるのじゃ?オキナ。タケトリ一族の頭領も地に落ちたな」
「も、申し訳ございません!今回の事は全て」
「もうよい。妾は言い訳など聞きたくないのじゃ」
その頃。満身創痍で月都の宮殿へ戻ったオキナは生死の境をさ迷った後で意識を取り戻した。
そんなオキナを待っていたのは、ツクヨミの慈悲などまるで無い冷徹な瞳だった。
「まぁ、主は妾の為によく働いてくれておるからのぅ。今回の事は今までの主の労と引換に免じてやっても良い」
パサリと羽扇を翻したツクヨミはため息混じりに呟いて、未だ傷の癒えきれていないオキナを鋭く見やる。
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story101(プロフ) - はい!ぼんさんの作品、正座待機でお待ちしております。 (2016年12月25日 22時) (レス) id: 8b873bc734 (このIDを非表示/違反報告)
ぼん(プロフ) - story101さん» こんばんわ!お久しぶりです^^*更新停滞申し訳ございません(><)ふぉお!そう言って頂けると喜びの舞を披露しちゃいますよ!!←怖い有難うございます!これからもよろしくお願いします(。_。*) (2016年12月25日 22時) (レス) id: c56038631b (このIDを非表示/違反報告)
story101(プロフ) - こんばんはまっくろワッサンです。私エンマ大王。特、にぼんさんの作品のエンマ大王の大ファンです。面白いのひと言に尽きるというか (2016年12月25日 21時) (レス) id: 8b873bc734 (このIDを非表示/違反報告)
こたつ(プロフ) - ぼんさん» いえいえ、それほどでも(照)(((はい!もちろんです!応援してます!! (2016年10月29日 0時) (レス) id: a285e02c29 (このIDを非表示/違反報告)
ぼん(プロフ) - こたつさん» こんばんわ!おおっ!流石こたつさん^^*仕事が早いでウィス・:*+.(( °ω° ))/.:+読み返して下さってありがとうございますー!これからも頑張りますのでよろしくお願いしますm(_ _)m (2016年10月28日 1時) (レス) id: 5b2ccc4cc0 (このIDを非表示/違反報告)
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