92.あと少し ページ17
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もし、Aと出会えてなかったら。
そんなことを、彼女の背中を見つめながら考えた。
たった1ヶ月の間、ただそれだけの時間を共に過ごしただけで、こんなにも心が満たされることがあるのだろうか?
実際、前に付き合っていた彼女に、こんなにも感謝の気持ちを感じたことはない。
むしろ、Aといた方が楽しかった。
男女の関係とかそんなんじゃなくて、家出少女を匿っていた、この不思議な関係が。
他人でもなく、家族でもなく、恋人でもない。
どのピースにもならない、よくわからない形。
それで、良かったんだと思う。
神様なんて信じてないけど、でも、こればかりはそうなのかと信じざるを得ない。
あの鈴をくれた謎の声を聞いたのもある。
結局、誰かがくれたこの日々は終わってしまうが。
『どう?綺麗になったでしょ〜 』
食器洗い、さらには部屋の掃除まで終えたAは、自信たっぷりだった。
赤「ふふっ、」
『え、なんかおかしい?』
赤「いや、子供やなぁって。」
『なにそれ!』
赤い頰を膨らませると、また同じことを思ってしまう。
決して馬鹿にしてるつもりは無いねんで。
汚い大人じゃないAを見て、少し嬉しいだけ。
片付いた部屋を見回すと、やっぱりちょっと、閉じ込めていたものが溢れ出しそうになる。
Aの物は、何処かで買ってきたリュックに全て入っていた。
それを背負うAを、ぼんやりと戦いに行くみたいや、なんて思った。あながち間違いではない。
『これで、すばるくんともお別れだね 』
やっぱり、さよならか。
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朱狐(プロフ) - ハニーレモンさん» 本当ですか!ありがとうございます!励みにして頑張ります! (2019年9月28日 8時) (レス) id: 576e85210a (このIDを非表示/違反報告)
ハニーレモン - はじめまして最初から読みました。安くんの存在も気になります。すばるくんには主人公ちゃんを最後まで守ってあげてほしいです。楽しみに待っています。(*^-^*) (2019年9月28日 0時) (レス) id: 74ed2de143 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:朱狐 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/personal.php?t=tikuwa123456789&scr=novel/bokuranokako...
作成日時:2018年2月8日 19時